AI概要
【事案の概要】 被告は、スマートフォンの修理業を営む会社であり、平成24年頃から「iPhone修理王」の名称でフランチャイズ事業を開始し、その後「スマホ修理王」の商標(引用商標)を店舗名やウェブサイト等に広く使用していた。原告は、平成28年11月に被告との間で「XPERIA修理王」のフランチャイズ契約を締結し、被告の指定により「スマホ修理王 新宿店」の屋号で店舗を運営していた。ところが、原告が被告以外からパーツを仕入れたことが判明し、平成30年3月30日付けで契約違反を理由にフランチャイズ契約を解除された。原告は、その解除のわずか4日後に「スマホ修理王」の文字商標について商標登録出願を行い、令和元年8月に設定登録を受けた。その後、原告は被告に対し商標権侵害を警告し、合計2670万円のライセンス契約を提案するなどした。被告が本件商標の無効審判を請求したところ、特許庁は商標法4条1項7号(公序良俗違反)に該当するとして登録を無効とする審決をした。原告がこの審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 本件商標が商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するか。具体的には、元フランチャイジーである原告による本件商標の出願が、先願主義の悪用として社会的相当性を欠くものといえるかが争われた。原告は、契約終了後の商標出願は自由競争の範囲内であり、契約書にも競業禁止規定がないと主張した。被告は、フランチャイズ契約の趣旨に照らし、原告には被告の商標を尊重すべき信義則上の義務があり、出願は被告の事業妨害と不当利益を目的としたものであると主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却し、審決を維持した。裁判所は、フランチャイズ契約における「商標・商号・その他の表示の提供」には「XPERIA修理王」だけでなく「スマホ修理王」も含まれると認定した。その上で、原告は被告のフランチャイジーとして「スマホ修理王」が被告の事業に係る商標であり、使用に被告の許諾が必要であることを十分認識していたと判断した。にもかかわらず、契約解除のわずか4日後に出願に及び、設定登録後にはフランチャイザーであった被告に対し商標権侵害を警告して高額なライセンス料を要求したことは、被告の顧客吸引力を利用し続けようとしたものであり、被告が商標登録を経ていないことを奇貨として、被告の事業を妨害する加害目的又は商標を高額で買い取らせる不当な目的で行われたものと認定した。このような出願は、商標制度における先願主義を悪用するものであり、社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くとして、商標法4条1項7号に該当すると結論づけた。原告の職業選択の自由に関する主張についても、他人の信用の希釈や混同を理由とする使用制限はやむを得ず、他の屋号を選択することも可能であるとして退けた。