銃砲刀剣類所持等取締法違反、|組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反、|建造物損壊(変更後の訴因|銃砲刀剣類所持等取締法違反、|組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 指定暴力団C1会C2一家の総長(被告人A1)、総長代行(被告人A2)、若頭(被告人A3)、行動隊長(被告人A4)及び構成員(被告人A5)の5名が、対立する暴力団I3組の事務所が入居するビル1階のシャッター等に向けてけん銃3発を発射した事件について、組織的犯罪処罰法違反(組織による不特定多数の用に供される場所でのけん銃発射)、銃刀法違反及び建造物損壊の共謀共同正犯として起訴された事案である。事件の背景には、I3組関係者がC2一家の縄張りで違法薬物を密売したことに端を発するもめ事があり、双方の組長間で話し合いによる解決に向かっていたところ、突如としてI3組組員と思われる者がC2一家所属の組長らを襲撃・拉致するという事件が発生した。その数時間後の深夜に本件発砲が実行されたものであるが、実際に現場で発砲したのは別の構成員3名(実行犯)であり、被告人5名が実行犯らと共謀していたか否かが問われた。 【争点】 主たる争点は、(1)被告人5名と実行犯3名らが本件犯行について意思を通じ合って実行したといえるか(共謀の有無)、(2)本件犯行がC2一家の意思決定により、あらかじめ定められた役割分担に従い一体として行われたといえるか(組織性)の2点である。検察官は、C2一家本部事務所で幹部による「仕返しの実行」が決定され、被告人A4を介して組員に伝達されたと主張した。これに対し弁護人は、被告人らは拉致された組長の救出しか考えておらず、実行犯の一人が個人的な怒りから突発的に発砲したものであると主張した。 【判旨】 裁判所は、争点(1)の共謀について合理的な疑いが残るとして、争点(2)を判断するまでもなく被告人5名全員に無罪を言い渡した。その理由は以下のとおりである。第一に、検察官が重視した元組員Mの「被告人A4が'誰が返しに行く'と発言した」との証言について、当時極度に怯えていたMが被告人A4の発言を仕返しの趣旨と思い込んだ可能性や、事後的に記憶が変容した可能性が否定できないとした。また、拉致された幹部Kの生死が不明な段階で拳銃発砲というKを見捨てる重大な決断を短時間で行うのは不自然であること、被告人A1らがKの救出のため上位団体の幹部に深夜電話をかけて交渉を依頼していた事実は仕返しの決定と整合しないことを指摘した。第二に、本部事務所で準備された拳銃2丁はいずれも本件犯行に使用されたものとは認められず、拳銃の準備状況から共謀を推認することはできないとした。第三に、実行犯が受け取った各100万円も、組織からの報酬ではなく個人的な謝礼である可能性が否定できないとした。以上を総合しても、実行犯の誰かが幹部の意思とは関係なく何らかの事情で発砲した可能性が否定しきれず、「疑わしきは被告人の利益に」の原則に基づき無罪とした。