AI概要
【事案の概要】 本件は、炭素繊維の粉砕・分散技術の開発等を事業とする原告(株式会社)が、原告の代表取締役であった被告Aが、原告在任中に原告に無断で被告会社(株式会社アルメディオ)の顧問に就任し、原告が開発した炭素繊維の粉砕・分散技術やノウハウを被告会社に提供して取得させた行為は、取締役の忠実義務(会社法355条)及び競業避止義務(同法356条1項1号)に違反する不法行為であり、被告会社はこれに加担したと主張して、被告らに対し、民法719条1項及び709条に基づき、損害賠償として5000万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 原告は設立当初から炭素繊維の粉砕・分散技術の開発を進め、炭素繊維をナノサイズに粉砕してチップ状にした「ナノファイバーチップ」の開発や、カーボンナノワイヤー分散液に係る特許出願を行っていた。被告Aは原告の代表取締役として技術開発の中心的役割を担っていたが、遅くとも平成30年8月には被告会社の顧問に就任し、炭素繊維の分散技術に関する技術指導を行っていた。被告会社は同月、「世界初」の高分散・高濃度炭素繊維マスターバッチの商品化に成功した旨のニュースリリースを公表した。 【争点】 1. 被告Aの原告に対する忠実義務違反及び競業避止義務違反の有無 2. 被告会社の被告Aとの共同不法行為の成否 3. 原告の損害発生の有無及び損害額 【判旨】 裁判所は、一部認容・一部棄却とした(認容額160万円)。 争点1について、裁判所は、原告が開発していたカーボンナノワイヤー分散液の製造技術と被告会社が公表した高分散・高濃度炭素繊維マスターバッチの技術的内容が共通していること、被告会社が被告Aを顧問に迎える以前には同種技術の知見を有していなかったこと等から、被告Aが原告の技術情報を被告会社に提供し利用させたと認定した。被告Aは原告の代表取締役在任中に原告の技術情報を第三者に開示して使用させたものであり、忠実義務に違反する不法行為に当たると判断した。ただし、顧問就任行為自体は競業取引には該当しないとして、競業避止義務違反は否定した。 争点2について、被告会社は被告Aから技術情報の提供を受けこれを自己の事業に利用しており、被告Aが原告の代表取締役であることは登記で容易に確認できたことから、少なくとも過失があったとして、共同不法行為の成立を認めた。 争点3について、原告主張の2億円及び5000万円の損害は、原告の事業が量産化に至っていないこと等から認められないとした。もっとも、被告会社が原告の技術情報の経済的価値を一定程度享受したと評価し、被告Aが原告の取締役在任中に被告会社の顧問を務めていた8か月間の顧問料相当額(月額20万円×8か月)である160万円をもって原告の逸失利益と認定した。