国内・国際特許を取れなくされた職務発明における相当の対価請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、被告(日鉄テクノロジー株式会社)の元従業者である原告が、被告在籍中にした職務発明(船舶の両舷ドラフト差測定装置に関する発明)について、使用者であった被告に特許を受ける権利が承継されたと主張し、特許法35条に基づく相当の対価の一部請求として500万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 原告は、被告の前身である株式会社日鐵テクノリサーチに勤務していた平成20年末頃に本件発明をした。原告は平成27年に自ら特許出願を行い設定登録を受けたが、被告及び親会社の日本製鉄が特許異議を申し立て、一部請求項が削除される訂正を経て異議申立ては却下された。その後、原告は日本製鉄らに対し特許権侵害訴訟(前訴)を提起したが、控訴審において本件発明は原告の職務発明であり、テクノリサーチに承継されたと認定され、冒認出願に当たるとして請求は棄却された。原告は当該控訴審判決を踏まえ、職務発明であることを前提に本件の相当対価請求訴訟を提起した。なお、ドラフトサーベイ(喫水検査)の鑑定業務は港湾運送事業法に基づく許可を受けた検査機関の登録サーベイヤーが行うものであり、被告自身はサーベイヤー登録をしていないため、検査会社にドラフトサーベイを委託し、被告装置を無償貸与していた。 【争点】 被告が本件訂正発明の実施により、法定通常実施権(特許法35条1項)の範囲を超えた独占的利益(超過利益)を得ているか否か。原告は、被告装置の使用によるボートチャーター料金の削減利益が年間688万円生じており、20年間の独占的利益は1億2384万円に上ると主張した。被告は、本件特許権は原告が冒認出願により取得したものであるため被告が第三者に権利行使する余地はなく、検査会社に装置を無償貸与しているがライセンス料等の収入も得ていないとして、超過利益は存在しないと反論した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、特許法35条に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは、通常実施権を超えた部分、すなわち第三者への実施許諾による実施料収入等の利益又は独占的実施の利益をいうと解した上で、被告は検査会社に被告装置を無償貸与しているもののライセンス料等の収入を得ておらず、実施料収入を得ている場合には該当しないと認定した。また、被告が他社に本件訂正発明の実施を禁止した事実や、禁止の結果として他社に実施許諾した場合に予想される売上高を上回る売上高を得た事実も認められないとして、超過利益の存在も否定した。さらに、本件特許権は原告が冒認出願により原告名義で設定登録されていたのであるから、被告が本件特許権に基づき第三者に対して権利行使をする余地はなかったとみるのが自然であると指摘し、原告の主張はいずれも採用できないと判断した。