特許権侵害に基づく損害賠償等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4ネ10052
- 事件名
- 特許権侵害に基づく損害賠償等請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2022年9月21日
- 裁判官
- 本多知成、浅井憲、中島朋宏、北原潤一、中嶋俊夫、辻田朋子
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 控訴人は、発明の名称を「医薬」とする特許(特許第5190159号)に係る特許権を有する製薬会社であり、被控訴人が製造販売する医薬品(スタチン系高脂血症治療薬)が同特許の技術的範囲に属し特許権を侵害するとして、民法709条又は同法703条に基づき、平成25年12月から平成31年3月までの期間に係る損害賠償等合計約188億円の支払を求めた。本件特許の請求項6及び9に係る発明は、有効成分であるピタバスタチン又はその塩と、崩壊剤(カルメロース及びその塩、クロスポビドン又は結晶セルロースから選ばれる1種以上)を含有し、水分含量を2.9質量%以下とすることにより、HMG-CoA還元酵素阻害活性の低いラクトン体の生成を抑制し、有効成分の安定性と崩壊性を両立させた固形製剤に関するものである。原審(東京地裁)は控訴人の請求を全部棄却し、控訴人がこれを不服として控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)本件発明6及び9に係るサポート要件違反及び実施可能要件違反の有無、(2)先行文献(乙12公報:アトルバスタチンに関する国際特許出願)に基づく本件発明6及び9の進歩性欠如の有無、(3)訂正後の本件発明6及び9について進歩性欠如が解消されたか、(4)損害額である。特に、乙12公報に記載されたアトルバスタチンの錠剤処方から、ピタバスタチンへの置換が当業者にとって容易であったか否かが中心的争点となった。 【判旨】 知財高裁は、控訴棄却の判決を言い渡した。裁判所は、乙12公報の実施例8に記載された「アトルバスタチンCaを含む錠剤であって、水分が2.73、1.99、1.55又は1.73%である医薬剤形」を引用発明と認定した上で、本件発明6との相違点はHMG-CoAレダクターゼ阻害剤がピタバスタチンかアトルバスタチンかという点のみであると判断した。そして、両者はいずれもスタチン類に属し、ジヒドロキシカルボン酸骨格という共通骨格を有すること、いずれもラクトン体生成及びその抑制の機序において共通すること、乙12公報自体にイタバスタチン(ピタバスタチンと同義)がスタチン類の例として挙げられていることから、アトルバスタチンに代えてピタバスタチンとすることは当業者が適宜なし得たと認定した。本件発明の効果(ラクトン体生成の抑制及び崩壊性の優秀さ)についても、当業者が乙12発明から予測し得る範囲内であり格別顕著なものではないとした。訂正発明についても、気密包装体への収容や水分含量の限定、コーティングの除外等の追加構成は進歩性欠如を解消するものではないと判断し、原判決を維持した。