AI概要
【事案の概要】 色紙・書道用紙等の製造販売を業とする被告会社において、有期雇用パート従業員として週3日・1日4時間50分勤務していた原告が、新型コロナウイルス感染症の影響による業績悪化を理由に雇止めされた事案である。原告は平成30年8月に被告と1年間の有期労働契約を締結し、令和元年8月に1回更新されたが、令和2年7月に契約不更新を通知された。原告は、契約書に60歳定年の定めがあり雇用継続の合理的期待があったとして、地位確認及び未払賃金等を求める本訴を提起した(本訴)。これに対し被告は、原告が記者会見やインタビューで被告の名誉・信用を毀損し、労働組合を通じて大量の抗議書面を送付させて業務を妨害したとして、440万円の損害賠償を求める反訴を提起した(反訴)。原告は、反訴は嫌がらせ目的の不当訴訟であるとして110万円の損害賠償も併せて請求した。 【争点】 1. 原告に雇用継続の合理的期待が認められるか 2. 本件雇止めに客観的合理性・社会的相当性があるか 3. 原告の記者会見・インタビュー・労働組合の抗議活動が被告に対する名誉毀損・業務妨害に当たるか 4. 被告の反訴提起が不当訴訟に当たるか 【判旨】 裁判所は、原告の本訴請求及び被告の反訴請求をいずれも棄却した。雇止めの有効性については、本件労働契約が週3日・1日4時間50分のパート契約で特殊な技能を要しない代替可能な業務であったこと、更新は1回のみで通算雇用期間が2年3か月と短いこと、雇止めの約4か月前に勤務態度次第では更新に影響し得る旨告げられていたこと等から、雇用継続の合理的期待は認め難く、仮に認められるとしてもその程度は高くないとした。その上で、被告が赤字経営下でコロナ禍により売上が前年比約27〜62%に落ち込んでいたこと、パート従業員全員が休業状態にあったこと、雇用調整助成金の延長が未確定であったこと等を総合考慮し、雇止めは客観的合理性・社会的相当性を欠くとはいえないと判断した。被告の反訴については、原告の記者会見やインタビューでの発言はコロナ禍の雇止めという社会的関心事に関する原告の立場からの意見表明にとどまり、表現の自由の観点から違法とはいえないとし、労働組合の抗議活動も組合が主体的に行ったもので原告の不法行為は成立しないとした。他方、原告が反訴を不当訴訟と主張する点についても、被告側の心情からすれば提訴に至ったことはやむを得ない面があり、裁判制度の趣旨に照らして著しく相当性を欠くとはいえないとして排斥した。