特許権移転登録手続請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、台湾の法人である原告が、「筋肉電気刺激装置」に関する特許権を有する被告(日本の株式会社)に対し、当該特許に係る発明の真の発明者は原告側であるとして、特許法74条1項(冒認出願に対する特許権の移転請求)に基づき、特許権の移転登録手続を求めた事案である。 原告は、筋肉に電気刺激を与えて筋肉を強化するEMS(電気的筋肉刺激)装置の開発・製造を業としており、以前から「SPOPAD」というEMS製品を開発・販売していた。SPOPADでは、制御基板と電極の間に段差が生じるため金属弾片を介して導通させていたが、使用を続けるうちに接触不良が生じる課題があった。そこで原告代表者の丙は、より安定的な導通を確保するため、電極から伸びるリード部を2段階で折り曲げて制御基板に直接接触させ、ネジで固定するという構造を着想し、平成26年4月頃までに試作機「EP-200」を開発した。その後、被告が本件発明の発明者を自社代表者として特許出願を行い、特許権を取得した。 【争点】 1. 本件発明の特徴的部分はどこか。 2. 本件発明の特徴的部分を着想したのは原告か。 争点1について、原告は構成要件G・H・J(リード部の折り曲げ構造とネジ止め固定)が特徴的部分であると主張し、被告はこれに加えて構成要件C・D(横通電の構成)も特徴的部分に含まれると主張した。争点2について、原告は自社代表者の丙がEP-200の開発過程で構成要件G・H・Jを着想したと主張し、被告は発明者は被告代表者であると争った。 【判旨】 裁判所は、まず争点1について、本件優先日当時、横通電を採用したEMSは一般に広く知られていたことから、構成要件C・Dの横通電は本件発明の特徴的部分に含まれないと判断した。本件発明の特徴的部分は、金属弾片に代えてリード部をケース内壁に沿って2回折り曲げ、ケースと制御基板の間にリード部を挟み込んで固定する構成(構成要件G・H)、及びネジ止めによる固定(構成要件J)であると認定した。 争点2について、裁判所は、原告がSPOPADの金属弾片による導通不良の問題を認識した上で、リードを2段階で折り曲げてネジで固定するという構成を着想し、平成26年4月頃までにEP-200として試作・設計していた事実を認定した。被告側は発明者が被告代表者であると主張したものの、発明に至る具体的経緯を十分に説明しなかった。以上から、本件発明の特徴的部分を着想したのは原告代表者の丙であり、被告は冒認により本件特許権を取得したものと認められるとして、原告の特許権移転登録請求を認容した。