AI概要
【事案の概要】 本件は、家型の台所用多機能スタンド「アピュイマルチスタンド」を製造・販売する原告(プラスチック製品メーカー)が、テレマーケティング業を営む被告(通信販売「ショップジャパン」運営会社)に対し、被告が原告商品の形態を模倣した「鍋ふたスタンド」を台湾から輸入・販売等したことについて、損害賠償等を求めた事案である。原告商品は平成25年8月から販売され、テレビや雑誌でも紹介された人気商品であった。被告は平成27年5月頃から被告商品を輸入し、一部を小売価格1000円で有償販売するとともに、大量宣伝により170万個以上を売り上げた人気フライパン「セラフィット」の購入者への「おまけ」として無償譲渡した。被告商品の形態が原告商品と実質的に同一であること及び被告商品が原告の実用新案権の技術的範囲に属することは争いがなかった。原告は、主位的に不正競争防止法2条1項3号(形態模倣)に基づく損害賠償、第1次予備的に実用新案権侵害に基づく損害賠償、第2次予備的に不当利得返還を請求した。 【争点】 主な争点は、(1)不正競争(形態模倣)について被告に故意又は過失があるか、(2)原告商品の販売開始から3年経過後の譲渡にも不正競争防止法が適用されるか、(3)不正競争による損害額、(4)実用新案権侵害について被告に故意又は過失があるか、(5)不当利得の成否及び額であった。特に損害額の算定方法(不正競争防止法5条1項・2項・3項の各算定方法の選択と金額)及び無償譲渡分の損害の扱いが中心的争点であった。 【判旨】 裁判所は、不正競争(形態模倣)に基づく損害賠償請求について、被告は原告商品の存在を認識しながら被告商品を輸入・販売したものであり、少なくとも過失があったと認めた。他方、原告商品の日本国内での最初の販売日(平成25年8月9日)から3年を経過した平成28年8月9日以降の譲渡については、不正競争防止法19条1項5号イにより損害賠償請求はできないと判断した。損害額については、有償販売分は不正競争防止法5条2項(被告の利益額)により13万3783円と算定した。無償譲渡分は、被告フライパンの宣伝広告の寄与が大きく、原告商品の市場とは異なるとして、約85%について「販売することができないとする事情」(同条1項ただし書)を認定し、残部について5条1項で算定するとともに、販売できないとされた数量については5条3項により販売価格の5%の使用料相当額を損害と認めた。実用新案権侵害に基づく損害賠償請求については、実用新案技術評価書を提示した警告前の侵害行為について被告に故意・過失は認められないとして棄却した。ただし、不当利得返還請求については、実用新案権の設定登録により権利は発生しているとして、3年経過後の有償・無償譲渡分につき実施料相当額(販売価格の5%)の不当利得を認めた。結論として、不正競争による損害賠償159万7112円及び不当利得返還66万9289円の合計約226万円の支払を命じ(請求額2090万円に対し約1割の認容)、その余の請求を棄却した。