AI概要
【事案の概要】 原告は、自ら管理運営する将棋に関するウェブサイトに掲載していた文章(対局マナーに関する解説文)を、被告(NHK)が放送したテレビ番組「将棋フォーカス」のコーナー「初心者必見!対局マナー」においてナレーション及び字幕としてほぼそのまま無断で使用したとして、人格権侵害を理由に民法709条に基づく損害賠償(慰謝料15万円及び弁護士相談費用等1万5000円の合計16万5000円)を請求した事案である。被告は放送4日後に番組ウェブサイト上で謝罪文を掲載し、さらにその後、原告ウェブサイトを特定した上で経緯を説明する文章を公表していた。なお、原告は著作権及び著作者人格権の侵害は主張していない。 【争点】 主な争点は、(1)本件番組の放送により原告の人格権(名誉権及び平穏な日常生活を送る利益)が侵害されたか、(2)損害の発生及びその額である。原告は、番組を視聴した者がインターネット検索で原告ウェブサイトを見つけ、原告側が無断転載をしていると誤解する可能性があるとして名誉毀損の危険を主張した。被告は、著作権侵害を主張しない以上、著作物の利用による利益とは異なる法的保護利益の侵害が具体的に主張立証されておらず、また番組の内容自体が原告の社会的評価を低下させるものではないと反論した。 【判旨】 東京地裁は、請求を棄却した。裁判所は、被告が原告文章に依拠して本件ナレーション等を作成し、「以下省略」といった特徴的な表現までほぼ同一であること、原告の事前了解や出典表示もなかったことから、被告の行為は公共の放送事業者として不適切であったと認めた。また、原告文章に独自性があることや被告の公共性に照らし、視聴者が原告ウェブサイトの方を無断転載と疑う可能性も否定できないとした。しかし、被告が放送4日後に謝罪文を掲載して誤解防止措置を講じていること、実際に誤解が広まった事実が認められないこと、番組内容自体に原告の社会的評価を低下させる事実の摘示がないことから、名誉毀損の可能性は抽象的なものにとどまると判断した。平穏な日常生活を送る利益についても、損害賠償請求を可能とする程度の侵害は認められないとして、不法行為の成立要件である「権利又は法律上保護される利益」の「侵害」を否定した。なお、本来は著作権・著作者人格権侵害の観点から検討すべき事案であるが、原告がこれを主張しないため判断できないと付言した。