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【事案の概要】 本件は、「発電システム及び発電方法」と題する特許出願(特願2015-176188号)について、特許庁が実施可能要件(特許法36条4項1号)を満たさないとして拒絶査定不服審判の請求は成り立たないとの審決をしたため、原告がその取消しを求めた事案である。 本願発明は、水圧・圧縮空気及び大気圧を利用した発電システムに関するものであり、貯液部から揚水路によって液体を揚水し、揚水された液体を下方導水路及び水平導水路を経て集液部(大気圧室)に導き、集液部の底部から導水路を介して貯液部へ落下させる際の落下エネルギーで発電するとともに、圧縮気体と液体を循環再使用するという構成を有していた。原告は、平成27年9月に出願した後、拒絶理由通知を受けて補正を行い、拒絶査定に対して不服審判を請求したが、特許庁は令和3年10月に審判請求不成立の審決をした。 【争点】 本願明細書の発明の詳細な説明が、当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているか(実施可能要件の充足性)。具体的には、(1)発電時にゲートを開けた際、下方導水路内の液体が管内を落下して揚水路頂上部が真空域に保たれ、大気圧によって貯液部の液体が揚水されるという動作が実現するか、(2)大気圧室内において大気圧より低い低圧力空間が生成されるか、が争われた。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。まず争点(1)について、裁判所は、発電開始前の状態では、液体は貯液部の水面下から揚水路・下方導水路を経てゲートまで満たされている一方、ゲートより下流の管内には水が存在しないと認定した。その上で、ゲートを開けた際の水の挙動を物理的に検討し、揚水路下部の貯液部水面には大気圧と水柱の圧力がかかる一方、下方導水路の下端には水平導水路内の平均気圧(圧縮気体の射出により大気圧より大きい)と水柱の圧力がかかるところ、後者の方が大きいため、下方導水路内の水は一旦上方に持ち上がった後、揚水路に流れ落ちていくと判断した。したがって、原告が主張する「下方導水路内の液体が落下し、揚水路頂上部が真空域に保たれて揚水が行われる」という動作は起こり得ないとした。次に争点(2)について、大気圧より高い圧力の圧縮気体を大気圧の空間に放出しても大気圧より低い低圧力空間が形成されるとの記載は明細書になく、これを裏付ける技術常識の立証もないとして、原告の主張を排斥した。以上から、本願明細書は実施可能要件を満たさないとした審決の判断に誤りはないと結論付けた。