AI概要
【事案の概要】 本件は、顔料等の製造販売を行う原告(クラリアントケミカルズ株式会社)が、かつて原告に勤務し秘密保持契約を締結していた被告に対し、被告が原告の営業秘密である電子データ(顧客別販売データ、売上・利益率データ、市場分析データ等)を不正に取得・使用したと主張して、不正競争防止法2条1項4号・7号に基づく差止め・廃棄、秘密保持契約に基づく使用等の差止め・廃棄、及び所有権に基づくUSBメモリの返還を求めた事案である。被告は、原告のマーケティング部門マネージャーとして勤務していたが、競合会社であるSUDARSHAN社に転職し、退職前にUSBメモリを会社貸与PCに接続してデータを複製した疑いが持たれていた。 【争点】 主な争点は、(1)本件各情報の営業秘密性、(2)被告がプラスチック部門の市場分析ファイル(本件ファイル1)を不正の手段により取得したか、(3)被告が利益管理データ等(本件ファイル2〜6及び本件情報7〜13)を不正取得し使用・開示したか、(4)秘密保持契約に基づく義務の有無、(5)USBメモリの所有権の帰属である。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却又は却下した。まず営業秘密性について、本件ファイル1〜6は、就業規則・行動規範による秘密保持義務の存在、ID・パスワードによるアクセス管理、SharePoint上の部門別アクセス制限等から秘密管理性が認められ、有用性・非公知性も肯定して「営業秘密」に該当すると認定した。他方、本件情報7〜13は具体的内容が不明であり営業秘密性を否定した。次に、本件ファイル1の不正取得について、被告がファイルを受領した時点ではSUDARSHAN社への転職が確定しておらず、マーケティング部門の業務としてプラスチック部門のプロジェクトに関わることは不自然でないこと等から、不正の手段による取得とは認められないとした。本件ファイル2〜6については、PC内に保存されていたことは認められるものの、フォレンジック調査の結果からUSBメモリへの複製を直接裏付ける証拠はなく、フォルダ構造の相違等から複製の事実を認定できないとした。秘密保持契約に基づく請求については、契約の成立及び本件ファイル1〜6が契約上の「秘密情報」に該当することは認めたものの、被告が現時点までにこれらを開示・使用した証拠はなく、将来の差止めの必要性も認められないとして訴えの利益を欠くと判断した。USBメモリの返還請求については、販促用品として従業員が自由に使用しており原告も異議を述べていなかった実態から、被告への無償譲渡の合意が成立したと認め、請求を棄却した。