取立金請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 マンションの建替え等の円滑化に関する法律(円滑化法)に基づくマンション建替事業において、建替組合(被上告人)は、区分所有権を失い再建マンションの権利も与えられなかった区分所有者Bに対し、円滑化法75条1号に基づく補償金1905万円の支払義務を負っていた。Bの当該補償金支払請求権に対しては、上告人(Bの連帯保証債務に基づく債権者)による差押え、北おおさか信用金庫による根抵当権に基づく物上代位としての差押え、近畿信用保証による抵当権に基づく物上代位としての差押えがそれぞれなされ、差押えの競合が生じた。被上告人は、円滑化法76条3項のみを根拠法条として補償金全額を供託し、上告人の取立請求に対し、当該供託をもって対抗できると主張した。 【争点】 円滑化法76条3項に基づく供託義務を負う施行者が、補償金支払請求権について差押えの競合が生じた場合に、同項のみを根拠法条とする供託をもって差押債権者に対抗できるか、それとも同項及び民事執行法156条2項を根拠法条とする混合供託をしなければならないか。 【判旨】 原判決を破棄し、第1審判決を取り消して上告人の請求を認容した。円滑化法76条3項の趣旨は、施行者が補償金を直接所有者等に支払うと抵当権者等が物上代位権を行使できなくなるおそれがあるため、供託を義務付けて抵当権者等を保護することにある。施行者は、差押えの競合が生じた場合でも同項に基づく供託義務を負うが、他方、円滑化法その他の法令に、同項に基づく供託義務を負う場合に民事執行法156条2項の供託義務を負わない旨の規定は存しない。したがって、施行者は両方の供託義務を負い、円滑化法76条3項及び民事執行法156条2項を根拠法条とする混合供託をしなければならない。混合供託の場合でも、抵当権者等は物上代位権を行使して差押債権者に優先して供託金の払渡しを受けることができるため、抵当権者等の保護に欠けるところはない。被上告人は円滑化法76条3項のみを根拠法条とする供託をしたにすぎないから、これをもって上告人に対抗することはできない。裁判官全員一致の意見。