AI概要
【事案の概要】 学校法人A大学(以下「A大」)が全株式を保有する株式会社B社は、A大から医療機器等の調達に関するコンサルティング業務の委託を受けていた。被告人は、B社から同業務の再委託を受けた株式会社C社の代表取締役であった。被告人は、B社取締役営業統括のD及びF社・G社を実質的に経営するEと共謀の上、A大付属I病院に納入する医療機器及び電子カルテ関連機器等の調達において、何らの実働も貢献もないF社・G社を商流に介在させ、その売買差益分を上乗せした価格でA大にリース契約を締結させた。これにより、第1の犯行(医療機器)で約1億3131万円、第2の犯行(電子カルテ関連機器等)で約6753万円、合計約1億9885万円の財産上の損害をA大に加えたとして、背任罪に問われた事案である。 【争点】 弁護人は、外形的事実関係に概ね争いはないとしつつ、被告人には背任の共同正犯は成立せず幇助犯にとどまると主張した。また、被告人は、A大がF社等の介在を了承していると思っていた、損害を及ぼす認識がなかった、Dに利益が還流するとは思っていなかったなどと供述した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人の主張をいずれも排斥し、共同正犯の成立を認めた。まず任務違背の認識について、被告人はC社経営者として当然にDの任務内容を認識しており、F社等に実働・貢献がないこと、その介在によりA大のリース料が増加することを認識していたと認定した。F社等の存在をA大に秘匿していた事実は、任務違背の認識の証左であるとした。損害の認識についても、他の場面での収支改善への貢献があっても、A大の了承なくF社等に利益を得させ過大な債務を負担させることが損害をもたらすことは明らかとした。図利目的については、Dが一貫してF社等への利益配分を強く指示していた経緯に照らし、被告人はD自身の利得にも繋がる可能性を相応に認識していたと認定した。共同正犯の成否については、被告人が犯行スキームを考案し商流を構築するなど終始核となる役割を果たしたこと、Dとの関係維持による将来的利益やC社の商流介在による利益取得など積極的動機があったことから、幇助犯にとどまるとの主張を退けた。量刑については、被害額合計約1億9800万円余りと重大であり、犯行態様も巧妙であるが、被告人は再委託を受けた立場で共犯者の利得から直接分配を受ける地位になく従属的側面もあること、I病院の経営改善に一定の成果を上げていたこと、前科前歴がないこと等を考慮し、懲役2年6月・執行猶予4年とした(求刑どおり)。