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【事案の概要】 三重県鈴鹿市に居住し生活保護を受給していた申立人は、二男が所有する普通乗用自動車について、処分行政庁(鈴鹿市社会福祉事務所長)から二男の通院に限り保有・利用を容認されていた。処分行政庁は申立人らに対し、自動車の運転記録票を毎月提出するよう求めたが、申立人らはこれに応じなかった。処分行政庁は複数回にわたり書面で提出を指示し、令和4年5月には運転記録票の正確な記録・提出及び通院以外の利用禁止を内容とする指導を行ったが、申立人らはなお従わなかった。処分行政庁は聴聞会の開催を通知したものの、申立人らは出席せず、令和4年9月27日付けで生活保護(生活扶助、住宅扶助、介護扶助、医療扶助)の停止処分をした。申立人は、同処分は違法であるとして取消訴訟を提起するとともに、行政事件訴訟法25条2項に基づき、第1審判決に至るまでの執行停止を申し立てた。 【争点】 ①本件停止処分により重大な損害を避けるため緊急の必要があるか、②本件停止処分の効力停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか、③本案事件について理由がないとみえるか。 【判旨】 裁判所は、申立てを認容し、本件停止処分の効力を第1審判決に至るまで停止した。①について、申立人は膀胱がんによりストーマ(人工膀胱)の購入費用として毎月1万8100円を要し、二男も複数の持病で通院中であること、預金残高がわずかであることから、生活保護が停止されれば衣食住の問題のみならず医療費の支出も困難となり、生命身体に対する危険に直面するとして、重大な損害を避けるための緊急の必要性を認めた。相手方は収入や他の医療費助成制度の存在を主張したが、ストーマの自己負担額や生活保護の目的に照らし、採用しなかった。②について、執行停止により公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれは認められないとした。③について、通院以外の自動車利用を全面的に制限する必要があるかは法令上一義的に明らかでなく、処分行政庁の指導が必要最小限度を超えていなかったか、仮に超えていなくとも停止処分を課すことに合理性が認められるかは現時点で明らかでないとして、本案について理由がないとはいえないと判断した。