殺人、建造物等以外放火、建造物損壊
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、大学での留年が確実となり、研究室のグループディスカッションの準備もできていなかったことから、現実から逃れたいと考え、令和3年9月9日未明、長崎市内の民家玄関先に置かれていた発泡スチロール製の保冷箱にライターで放火し、公共の危険を生じさせた(建造物等以外放火)。同日午後には、自室のマットレスや紙片にライターで点火し、床面を焼き焦がすなどした(建造物損壊、損害額約91万円)。さらに翌10日、「刑務所にずっといるために人を襲おう」と考え、佐賀県鳥栖市内で面識のない被害者(当時79歳)の背後から近づき、ハンマーで頭部を複数回殴打して殺害した(殺人)。被告人には自閉スペクトラム症傾向が認められたが、精神鑑定医は犯行の決意自体に精神障害が直接的な影響を与えたわけではないとしている。 【判旨(量刑)】 裁判所は、殺人事件について、高齢の被害者が一人でいるところを背後から襲い、悲鳴を上げているにもかかわらずハンマーで頭部を複数回殴打した残忍な犯行態様を特に重視した。無関係の人を狙った通り魔的犯行であり、被害者には防ぎようがなかった。動機は大学の留年等を苦にして刑務所に入ろうとしたという余りに身勝手なものである。自閉スペクトラム症傾向については、犯行の主たる原因は被告人の性格や考え方にあり、返り血に備えた着替えの準備や人気の少ない場所の選定など状況を十分理解して行動していたことから、有利に考慮するにも限界があるとした。放火・建造物損壊についても、深夜の住宅密集地での放火は延焼・住民死傷の危険があり、損害額も合計200万円超と高額であった。同種事案の量刑傾向に照らし、本件は相当に重い部類に属するとした。被告人には自首が成立するものの、刑務所に入るために事件を起こしながら自首で刑が軽くなることへの違和感を指摘し、刑を特に軽くする事情とは評価できないとした。遺族の厳しい処罰感情、被告人なりの後悔の念等も考慮した上で、求刑懲役25年に対し、懲役24年を言い渡した。