損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 宗教法人オウム真理教の元信者である被控訴人(原告)が、控訴人(被告・産経新聞社)の発行する新聞に掲載された4本の記事(本件記事①〜④)により名誉を毀損されたとして、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料150万円及び弁護士費用15万円の合計165万円)及び謝罪広告の掲載を求めた事案である。被控訴人は地下鉄サリン事件で特別手配され逮捕された人物であり、各記事はその逮捕や捜査状況等を報じたものであった。原審は、本件記事②及び③について名誉毀損の不法行為の成立を認め、合計27万5000円の損害賠償を認容したが、謝罪広告の請求は棄却した。控訴人が控訴し、被控訴人が附帯控訴した。 【争点】 主な争点は、①各記事の摘示事実の内容(特に、被控訴人がサリン製造を認識しながら関与したことまで摘示するものか、客観的な関与の摘示にとどまるか)、②各記事による被控訴人の社会的評価の低下の有無、③真実性又は真実相当性の抗弁の成否である。特に本件記事②(コラム)について、被控訴人が「サリンの製造に加わった」との記載が主観的認識を含む摘示か否か、本件記事③について、被控訴人の自宅から「サリン」と書かれたノートが押収されたとの事実の真実相当性が争われた。 【判旨】 控訴認容・附帯控訴棄却(原判決中控訴人敗訴部分を取消し、被控訴人の請求を全部棄却)。裁判所は、本件記事②はコラムとしての趣旨・論調を踏まえると、被控訴人にサリン製造への客観的関与があったことを摘示したにとどまり、主観的認識まで摘示するものとは認められないと判断した。その上で、本件記事①と同様に、捜査責任者の記者会見での発表内容や被控訴人自身のブログ投稿等に照らし、真実相当性の抗弁が成立するとした。本件記事③については、記者が捜査情報を集約する要職にあった捜査員から取材し、被控訴人宅の捜索差押え日を特定した質問に対し肯定的回答を得ていたことから、ノートが被控訴人宅から押収されたと信じたことには相当な理由があるとして真実相当性を認めた。本件記事④については、元捜査関係者のコメントは裁判所に認められなかった捜査機関側の主張等にとどまり、社会的評価を新たに低下させるものではないとした。以上から、本件各記事についていずれも不法行為は成立しないと結論づけた。