AI概要
【事案の概要】 本件は、「印刷された再帰反射シート」に関する特許(特許第4466883号)の特許権者である原告(日本カーバイド工業)が、被告ら(スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー及びスリーエム ジャパンイノベーション)の請求に基づき特許庁がした無効審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。 原告の特許は、道路標識等に用いられる再帰反射シートにおいて、保持体層と表面保護層の間に白色酸化チタンを含有する印刷層を独立した領域として繰り返しパターンで設置することにより、色相を改善しつつ耐候性・耐水性を確保する発明に関するものである。特許庁は、英国特許出願公開第2171335号明細書(甲1文献)及び西独国特許出願第2118822号明細書(甲2文献)等に基づき、本件発明1及び2は当業者が容易に発明できたとして進歩性欠如を理由に無効審決をした。また、サポート要件違反も認定した。 【争点】 主な争点は、(1)甲1発明を主引用例とする進歩性判断の当否(甲1発明の認定の誤り、甲3記載技術の適用の動機付けの有無)、(2)甲2発明A又はBを主引用例とする進歩性判断の当否(表面保護層を設ける動機付けの有無)、(3)サポート要件違反の有無である。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、審決を取り消した。 まず、甲1発明を主引用例とする進歩性判断について、裁判所は、本件発明の「保持体層と表面保護層の間に印刷層が両層に接して設置され」かつ「印刷領域が独立した領域をなして繰り返しパターンで設置」される構成(相違点1-1と1-4)は、課題解決のための不可欠の構成であり一体として検討すべきとした。その上で、甲1発明のカバー層と微小球の間には空隙があり再帰反射の光路を形成する構造であるため、印刷層のフクレや耐水性低下という課題を当業者が認識できず、甲3記載技術(三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの層構成)を適用する動機付けがないと判断した。仮に動機付けがあるとしても、印刷層が保持体層と表面保護層に接する構成には想到しないとした。 次に、甲2発明Aを主引用例とする進歩性判断について、甲2発明Aの「Raster」の白い点は表面保護層がない状態で屋外使用に耐えることが前提であるため、さらに表面保護層を設ける動機付けがなく、相違点2A-1の構成に想到し得ないと判断した。甲2発明Bについても、印刷された透明な箔を「Raster」の多数の白い点とすることは甲2文献に記載も示唆もなく、独立した印刷領域を有する構成とする動機付けがないとした。 以上から、本件発明1及び2はいずれの引用発明に基づいても当業者が容易に想到し得たとはいえず、進歩性欠如を理由とする無効審決は誤りであるとして、審決を取り消した。