「オーサグラフ世界地図」の共同著作権確認請求
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、控訴人(原告)が、被控訴人(被告)に対し、「オーサグラフ世界地図」に関する4つの地図(本件地図1ないし4)について、控訴人が被控訴人とともに共同著作権及び著作者人格権を有することの確認を求めた事案の控訴審である。控訴人は、昭和56年に正四面体を長方形に展開する方法を、昭和60年にその長方形で平面を隙間なく充填する方法をそれぞれ発見し、これらの発見を出発点として、平成11年から被控訴人と共同研究を開始した。共同研究の成果として「オーサグラフ世界地図」の作成原理・作成方法が開発され、共同で特許出願も行われた。しかし、平成12年頃に共同研究が終了した後、被控訴人は控訴人に相談することなく、平成21年に本件地図1・2が掲載された論文を、平成29年に本件地図3・4が掲載された論文をそれぞれ単独で作成・発表した。控訴人はこれらの発表の事実を知らなかった。原審(東京地裁)が控訴人の請求を棄却したため、控訴人が知的財産高等裁判所に控訴した。 【争点】 本件地図1ないし4が控訴人と被控訴人の共同著作物に当たるか否か、すなわち、控訴人が本件各地図の著作者であるか否かが争点となった。控訴人は、共同研究の成果である以上、誰が記述・発表しても共同著作物に当たると主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、控訴を棄却した。裁判所は、共同著作物の要件として、(1)二人以上の者が共同して創作した著作物であること(客観的側面として共同の創作行為、主観的側面として共同創作の意思)、(2)各人の寄与を分離して個別的に利用できないこと、の2点を示した上で、著作権法はアイデアではなく「表現」を保護するものであるから、創作行為への関与とは、表現の創出に具体的に関与することを要すると判示した。本件では、控訴人が本件各地図の表現の創出に具体的に関与したことを認めるに足りる証拠がなく、控訴人自身も原審本人尋問で本件地図を作成したのは被控訴人である旨供述していた。また、論文に控訴人の氏名が記載されていた点については、著作権法14条の著作者推定が働くとしても、上記事情により推定は覆されるとした。控訴人の「共同研究の成果であれば当然に共同著作物である」との主張については、アイデアの保護と表現の保護を混同するものであって失当であると退けた。著作権法における「アイデアと表現の二分論」を明確に適用し、共同研究への貢献は作成原理・方法というアイデアの次元にとどまり、地図という具体的表現の創出への関与とは区別されるべきであるとして、原審判断を維持した。