損害賠償請求事件(住民訴訟)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 山口県の住民である原告が、同県が貴賓車としてトヨタセンチュリーを代金2090万円で購入した契約(本件契約)について、知事の裁量権の逸脱又は濫用による違法があると主張し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、被告(山口県知事)に対して、知事個人への損害賠償請求を求めた住民訴訟である。 山口県は令和元年9月当時、センチュリーを3台(議長用、副議長用、貴賓車各1台)保有していた。物品管理課長は、これらを同課で一元管理した上で3台から2台に削減し、更新基準を満たす副議長用公用車と、更新基準は満たさないが購入から約17年が経過した貴賓車の計2台を処分して、センチュリー1台を新車購入することを決裁した。車種選定にあたっては、長年の使用実績と品格を理由に他の車種は全く検討されず、調達方法としてリース・レンタカー等と比較した上で新車購入が妥当と判断された。なお、センチュリーは平成30年の全面改良で約700万円値上がりしており、購入価格2090万円は直近購入時の1.6倍以上であった。 【争点】 本件契約の締結・履行及び公金支出が財務会計上の違法行為に当たり、知事が不法行為責任を負うか否か。原告は、県の財政がひっ迫し歳出削減が求められる中、貴賓車の利用実績が乏しいにもかかわらず、約2000万円もの最高級車を購入する必要はなく、より安価な車種やレンタカー等で対応可能であったと主張した。被告は、貴賓車の車種選択は皇室対応や外国要人のもてなし等の政策的側面が強く知事の広範な裁量に委ねられており、裁量権の逸脱・濫用はないと反論した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容し、知事個人に対する2090万円の損害賠償請求を命じた。 まず、貴賓車の車種選択について知事の一定の合理的裁量を認めつつも、以下の点を指摘した。①貴賓車を1台減らす目的は更新基準を満たした1台を処分するだけで達成でき、更新基準を満たさない車両まで処分して新車を購入すべき高い必要性があったとはいい難い。②山口県ではセンチュリー以外の車種も公用車として使用されており、センチュリーでなければ実績・信頼・品格が満たされないとはいえない。③宮内庁が車種の希望を伝えた事実はなく、皇室対応の予備車両まで同車種である必要性も明らかでない。④令和2年度の財源不足見込額は276億円に上り歳出削減が求められる状況であった。⑤購入価格2090万円は全国で2番目に高額であった。 以上から、物品管理課は購入に当たり他の車種を全く検討せず、歳出削減の観点から当然考慮すべき事項について検討が著しく不十分であったとして、知事の裁量権の逸脱・濫用に当たる違法な財務会計行為と判断した。また、知事自身も、本件契約が県政運営に関わる重要事項であるにもかかわらず、物品管理課との間で適宜協議を持たず、補助職員の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反した過失があると認定した。