AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社チェンジ)は、モバイル端末の導入・管理事業等を目的とする会社であり、米国法人Jamf Software LLCとの再販売契約に基づき、Apple端末管理ソフトウェア「Jamf Pro」の一次代理店として販売を行っていた。被告(Jamf Japan合同会社)は、Jamf製品の日本における販売等を行う合同会社である。 宮城県栗原市教育委員会は、GIGAスクール構想に基づき、令和3年4月からiPadにJamf Proを導入することとし、富士ゼロックス宮城にライセンス取得を、NECネッツエスアイにキッティング作業を発注した。富士ゼロックス宮城はDIS経由で原告に見積りを依頼したが、その後発注手続が滞っていた。令和3年2月4日、NECネッツエスアイから被告従業員に対し、キッティング開始予定日が迫っているのにライセンス取得がされていないとの連絡があった。被告従業員は、原告の担当者に進捗確認のメールを送っても返信がなかったこと等から、納期遅延を懸念し、翌5日、富士ゼロックス宮城に対し、「今年度よりチェンジ様が再販可能なリセラーというポジションではなくなりますため」として、別の商流での調達を依頼するメールを送信した。 原告は、このメールが不正競争防止法2条1項21号(信用毀損行為)に該当するとして同法4条に基づく損害賠償、又は民法709条・715条の使用者責任に基づく損害賠償として、逸失利益224万円、信用毀損による無形損害500万円、弁護士費用72万4000円の合計796万4000円を請求した。 【争点】 ①本件メールの送信が、競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知・流布に当たるか、②被告従業員が被告の事業の執行として原告の信用を毀損したか、③被告側の故意の有無、④損害額が主な争点となった。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。まず、本件メールの主眼は、厳格な納期が迫った栗原市案件について関係者に迷惑をかけることなく速やかに作業を進めるため、富士ゼロックス宮城に協力を求めるところにあったと認定した。本件メールを受信した富士ゼロックス宮城の担当者はDISへの発注の進捗確認を行ったにとどまり、原告の代理店としての地位に関する記載自体には特段の注意や関心を払わなかったと認められた。また、DISもその後従前どおり原告にJamf製品の発注を継続しており、本件記載が原告の営業活動に実際の影響を及ぼしたとは認められなかった。以上から、本件メール中の記載は、これに接した者が原告の信用性に関係するものとして着目するものとはいえず、原告の社会的評価を低下させて信用を害するとまでは認められないとして、不正競争防止法に基づく請求も使用者責任に基づく請求もいずれも理由がないと判断した。