AI概要
【事案の概要】 令和4年7月10日施行の参議院議員通常選挙(選挙区選出)について、宮崎県選挙区及び鹿児島県選挙区の選挙人である原告らが、公職選挙法の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は憲法に違反し無効であるとして、公職選挙法204条に基づき選挙無効を求めた事案である。本件選挙当日の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は、最小の福井県選挙区を1とすると神奈川県選挙区の3.03倍であった。参議院の選挙区選出議員の定数配分については、かつて最大較差が5倍前後で推移していたところ、平成27年改正で初めて合区が導入され最大較差は2.97倍に縮小した。その後、平成30年改正では埼玉県選挙区の定数を2増員するにとどまり、抜本的な制度改革には至らないまま、令和元年選挙(最大較差3.00倍)を経て本件選挙に至った。 【争点】 本件定数配分規定が憲法の投票価値の平等の要請に反する違憲状態にあるか、及び、国会がこれを是正しなかったことが裁量権の限界を超えるかが争点となった。原告らは、人口比例選挙を要求する憲法に違反すると主張するとともに、平成27年改正法附則7条が求めた選挙制度の抜本的見直しが全く履行されていないと主張した。被告らは、最大較差3.03倍は合憲とされた先例の範囲内であり、国会は選挙制度改革に向けた真摯な取組を継続していると反論した。 【判旨】 福岡高裁宮崎支部は、請求をいずれも棄却した。まず、投票価値の平等は選挙制度の仕組みを決定する唯一絶対の基準ではなく、国会の裁量権の行使として合理性を有する限り一定の譲歩が許されるとする判断枠組みを確認した。その上で、選挙区間の投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったか否かは、較差の程度のみならず、立法府の較差是正に向けた取組状況と一体のものとして総合的に判断すべきとした。裁判所は、平成27年改正後、立法府の較差是正を指向する姿勢は大きく後退し、令和元年選挙後さらに後退した結果、具体的措置がとられないまま本件選挙に至り、最大較差が3.00倍から3.03倍に拡大したことを指摘し、本件選挙当時の投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態(いわゆる違憲状態)にあったと認めた。しかし、令和2年大法廷判決が合憲と判断していたこと、参議院選挙制度の改革は事柄の性質上慎重な考慮を要し漸進的にならざるを得ないこと、合区解消を強く求める意見が存在すること等を考慮し、本件選挙までに定数配分規定を改正しなかったことは国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないと結論づけた。