AI概要
【事案の概要】 本件は、三菱重工業株式会社が設営する長崎造船所において、被告の直営労働者又は下請会社の労働者として船舶の建造・修繕作業に従事した19名の労働者(又はその相続人ら)が、作業中の粉じん曝露によりじん肺又は肺がんに罹患したと主張し、安全配慮義務違反の債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案である。原告らは合計19グループに及び、労働者本人のほか、死亡した労働者の相続人も含まれる。被告の長崎造船所では、切断・溶接・組立て・艤装等の各工程で粉じんが発生し、労働者らは長期間にわたり粉じん作業に従事していた。 【争点】 主な争点は、(1)じん肺罹患の有無、(2)続発性気管支炎罹患の有無、(3)長崎造船所における就労との因果関係、(4)安全配慮義務違反の有無、(5)過失相殺(喫煙の影響)の可否、(6)損害額、(7)消滅時効の成否の7点である。特に、行政上の管理区分決定からじん肺罹患を推認できるか、下請労働者に対しても被告が安全配慮義務を負うか、喫煙歴のある労働者について過失相殺すべきかが争われた。 【判旨】 裁判所は、19グループのうち13名の労働者について請求を一部認容し、残る6グループ(原告番号5、6、7、12、16等)の請求を棄却した。棄却の主な理由は、長崎造船所以外の事業所における粉じん作業歴が長期間であり、長崎造船所での就労との因果関係が認められないこと等であった。安全配慮義務については、被告は遅くとも昭和35年4月頃(じん肺法施行時)には、直営労働者のみならず下請労働者に対しても、粉じん発生の防止・抑制、防じんマスクの使用等の安全配慮義務を負っていたと認定した。過失相殺については、じん肺の罹患自体に喫煙の影響を考慮することは相当でないとしつつ、続発性気管支炎の発症・悪化については喫煙の影響を考慮し、一部の原告について1割から4割の減額を行った。消滅時効については、最も重い管理区分決定時又は法定合併症の認定時を起算点とし、一部の原告の不法行為に基づく請求権について時効成立を認めたが、債務不履行に基づく請求権は時効不成立とした。慰謝料の基準額は、管理2相当のじん肺罹患者につき900万円、じん肺及び続発性気管支炎罹患者につき1300万円、じん肺による死亡者につき2500万円等とし、認容された原告らに対し、それぞれ慰謝料及び弁護士費用の支払を命じた。