住居侵入、強盗殺人、窃盗被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、平成31年2月19日深夜、金品窃取の目的で広島市内の被害者方(当時86歳)に台所窓から侵入したところ、被害者に発見されたため、殺意をもって刃物で胸腹部・左頸部等を多数回突き刺し、左総頸動脈及び左内頸静脈切断による失血により殺害した上、被害者所有の現金約2万6000円及び同居の親族所有の現金約9000円在中の財布1個を強取した(住居侵入、強盗殺人)。また、同月24日には兵庫県内で自転車1台を窃取した(窃盗)。原審(広島地裁・裁判員裁判)は被告人を無期懲役に処し、被告人側が控訴した。被告人は、家出後に手持ち資金が尽きたことから本件犯行に及んだものとされ、幼少期から実父による過酷な身体的・精神的虐待を受けていたという背景事情があった。 【争点】 弁護人は、①認知症のあった重要証人Tの警察官調書・検察官調書の証拠能力、②幼少期の虐待による脳への器質的影響に関する鑑定請求の却下の当否(訴訟手続の法令違反)、③被告人に積極的殺意がなかったこと、④被告人が現金等を持ち出していないこと、⑤殺害時に強盗の故意がなかったこと(事実誤認)、⑥無期懲役は重すぎること(量刑不当)を主張した。 【判旨(量刑)】 広島高裁は、控訴を棄却した。証拠能力については、Tは死亡により供述不能であるところ、甲74号証(警察官調書)は供述内容が客観的証拠に裏付けられ特信情況が認められるとし、検察官調書も刑訴法321条1項2号前段の要件を満たすとした原審判断を是認した。鑑定請求の却下についても、弁護人が虐待による脳の器質的変化が犯行に影響したことをうかがわせる具体的事情を指摘しておらず、裁量の逸脱はないとした。事実誤認の主張については、被害者の頸部付近に集中する深い刺創の態様から、倒れた被害者に対し意図的に頸部を狙って刺突したと認められ積極的殺意があったこと、被告人の血痕が被害者方の物色場所に付着していたこと等から強取の事実及び強盗の故意が認められるとした原審認定を是認した。量刑については、倒れた被害者の頸部を繰り返し深く刺す殺害態様は刃物を用いた強盗事件の中でも非常に危険性が高く悪質であること、動機に酌むべき点がないこと等を踏まえ、幼少期の虐待歴や前科がないこと等を考慮しても無期懲役が相当であるとした。