公職選挙法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、令和元年7月21日施行の第25回参議院議員通常選挙に際し、広島県選出議員選挙に立候補を予定していたAの選挙運動者であった被告人が、Aに当選を得させる目的で、投票及び投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、平成31年4月20日頃、Aの配偶者であり現職の衆議院議員であったCから、現金30万円の供与を受けたという公職選挙法違反(買収罪)の事案である。 被告人は、本件当時、三原市議会議員を数年務めた後に広島県議会議員選挙に当選したばかりであった。被告人は公判廷で公訴事実を争わない旨述べつつも、現金を受け取った時点では当選祝いの趣旨と認識していたと供述した。しかし、裁判所は、被告人がAの立候補予定やCがAの夫であることを認識していたこと、Cと被告人には従前ほとんど関わりがなかったにもかかわらずCの側から訪問を取り付けたこと、被告人が現職の国会議員から当選祝いを受けた経験がなかったことなどから、少なくとも選挙買収の趣旨で供与されるものではないかという程度の認識があったと認定した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を罰金15万円に処し、供与を受けた現金30万円を追徴した。量刑理由として、選挙により有権者の信任を得て公職に就く者として選挙の公正を害する金銭の供与は毅然と拒否すべき立場にあったこと、選挙買収の趣旨の可能性を認識しながら受け取ったこと、30万円という多額の現金が供与され国政選挙の公正が害される危険性が相当程度あったことを指摘し、犯情は軽いとはいえないとした。他方、事実を争わず反省の言葉を述べていること、収受した現金と同額の30万円をCの議員事務所に返還していること、前科前歴がないこと、検察審査会の起訴相当議決を受けて県議を辞職していることなどの酌むべき事情も考慮した。 弁護人は公民権停止期間の短縮を主張したが、裁判所は、本件が選挙の公正を直接かつ著しく害する買収罪であること、公職の立場にあったこと、供与額が多額であることを理由に、公民権停止期間の短縮は相当でないと判断した。