選挙無効請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、令和4年7月10日に施行された参議院議員通常選挙のうち、比例代表選出議員の選挙について、選挙人である原告らが、公職選挙法の議員定数の定め及びいわゆる特定枠制度は憲法に違反し無効であるとして、公職選挙法204条に基づき選挙無効を求めた訴訟である。平成30年改正により、参議院比例代表選出議員の定数が4人増加されて100人となり、非拘束名簿式比例代表制を維持しつつ、政党等の判断により優先的に当選人となるべき候補者(特定枠の候補者)を定めることができる特定枠制度が導入された。原告らは、この制度が合区により候補者を擁立できなかった県の現職議員を救済する目的で設けられたものであり、国民の意思を反映しない違憲な制度であると主張した。 【争点】 ①特定枠制度が憲法43条1項の代表民主制に違背するか、②国会が法律の附則で約束した選挙制度の抜本的見直しを履行しないことが憲法前文の国民の信託に違反するか、③平成30年改正法の国会審議における野党案の取扱いが討議権能の放棄として重大な手続違反に当たるか、④比例代表定数4人増加に正当な立法目的が存在するか、⑤選挙区選出議員選挙が違憲無効であることにより比例代表選出議員選挙も無効となるか。 【判旨】 東京高裁は、原告らの請求をいずれも棄却した。争点①について、特定枠制度は国政上有為な人材や少数意見・多様性を代表する者の当選機会を高め、合区問題に対応するものであり、投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点で選挙人が候補者個人を直接選択する方式と異ならず、憲法43条1項等に違反しないとした。争点②について、比例代表選出議員選挙と選挙区選出議員選挙は制度の趣旨・方法が異なる別個の選挙であり、前者の無効を求める訴訟で後者の憲法適合性を問題にすることはできないとし、また党首討論での定数削減の意向表明は法律を無効とする根拠にならないとした。争点③について、所定の手続にのっとって成立した法律の効力は国会審議の内容・経過により左右されないとした。争点④について、定数増加の立法目的・手段に不合理な点はないとした。争点⑤について、争点②と同様の理由で退けた。