地位確認等請求控訴事件、同附帯控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和3ネ833
- 事件名
- 地位確認等請求控訴事件、同附帯控訴事件
- 裁判所
- 名古屋高等裁判所
- 裁判年月日
- 2022年11月15日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 長谷川恭弘、末吉幹和、寺本明広
- 原審裁判所
- 岐阜地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 被控訴人(一審原告)は、岐阜県公安委員会の認定を受けた警備会社との間で雇用契約を締結し、交通誘導警備業務に従事していたところ、平成29年2月に保佐開始及び保佐人選任の審判を受け、同年3月に確定した。当時の警備業法14条・3条1号(本件規定)は、被保佐人を警備業者及び警備員の欠格事由と定めており、本件雇用契約も欠格事由の発生を解除条件としていたため、審判確定により被控訴人は退職を余儀なくされた。なお、本件規定は令和元年の一括整備法により削除されている。被控訴人は、国(控訴人・一審被告)に対し、本件規定を設けたこと及びこれを改廃しなかったことが憲法13条、14条1項、22条1項、27条1項に違反し、国家賠償法1条1項の違法行為に当たるとして、慰謝料100万円等の支払を求めた。原審(岐阜地裁)は、本件規定の違憲性が国会にとって明白となった平成22年7月頃から退職時点までの立法不作為を違法と認め、慰謝料10万円を認容した。国が控訴し、被控訴人も附帯控訴した。 【争点】 (1) 本件規定が憲法22条1項(職業選択の自由)及び14条1項(法の下の平等)に違反するか、(2) 国会が本件規定を改廃しなかった立法不作為が国賠法上違法か、(3) 本件規定の存在と雇用契約終了との因果関係の有無、(4) 慰謝料額。 【判旨】 名古屋高裁は、控訴棄却・附帯控訴一部認容とし、慰謝料を50万円に増額した。まず憲法22条1項について、本件規定の目的は警備業務の適正確保という消極的・警察的目的であり、国の主張する「警備業の社会的に健全な発展」は副次的目的にすぎないとした。保佐制度は本人の財産上の権利擁護を目的とするもので、警備業法の欠格事由とは制度趣旨が全く異なるから、被保佐人であることを理由に一律に全ての警備業務から排除することは、目的達成に必要な範囲を超えた規制であると判断した。保佐開始審判に先立つ医学的診断・鑑定は「自己の財産を管理・処分する能力」について行われるものであり、警備業務遂行能力の有無は診断されていないことも指摘した。憲法14条1項についても、障害の有無や成年後見制度の利用は自らの意思や努力で変えられない事情であり、同程度の判断能力でも保佐制度利用者のみを排除する本件規定は法の下の平等に反すると判断した。立法不作為については、平成11年整備法の附帯決議、障害者権利条約への署名・批准、成年後見制度研究会の報告等を踏まえ、遅くとも平成22年7月頃には違憲性が国会にとって明白であったとし、国賠法上違法と認めた。慰謝料額については、本件規定が職業選択の自由そのものを制約し、被控訴人が習熟した業務に従事する機会を強制的に奪われたことなどを考慮し、50万円が相当とした。