審決取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「銅銀合金を用いた導電性部材、コンタクトピン及び装置」に関する特許出願について、拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした特許庁の審決の取消しを求める訴訟である。原告(ユナイテッド・プレシジョン・テクノロジーズ株式会社)は、銅に対する銀の添加量が0.2~15wt%であり、所定の変位量における荷重が4gf以下である銅銀二元合金体からなるコンタクトピンの発明について特許出願をしたが、特許庁は、引用文献1(銅銀ニッケル三元合金のコンタクトプローブに係る発明)及び引用文献5(銅銀合金のコンタクトプローブに係る発明)に基づき進歩性を欠くとして、補正を却下し、審判請求を不成立とした。 【争点】 主な争点は、①本願補正発明と引用発明1との間で「コンタクトピン」と「コンタクトプローブ」の構造上の相違点が看過されたか(取消事由1)、②引用発明1の銅銀ニッケル三元合金からニッケルの添加を省略して銅銀二元合金とすることが容易想到か(取消事由2・相違点1の判断の誤り)、③変位量と荷重に関する相違点の判断の誤り(取消事由3)、④引用文献5に基づく進歩性判断について拒絶理由通知なくされたことが手続違背に当たるか(取消事由4)、⑤引用発明5における「合金」の認定の誤り(取消事由5)である。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、審決を取り消した。まず、取消事由1(相違点の看過)については、「コンタクトピン」が一部品から構成されるものに限定されるとの技術常識を認める証拠はなく、相違点の看過はないとして認めなかった。取消事由2(相違点1の判断の誤り)については、甲8(引用文献1)の記載からニッケルの添加が課題解決のための必須の構成とされており、ニッケルの添加を省略して銅銀二元合金とすることには阻害要因があると判断した。被告が主張する一次特性・二次特性の区別を前提としても、ニッケルの省略が直ちに動機付けられるとはいえないとした。取消事由3(相違点2の判断の誤り)については、変位量と荷重の設定は適宜設定されるべき設計事項にすぎず、容易想到であるとして認めなかった。取消事由4(手続違背)については、引用文献5は審査段階で一度も指摘されず審決で初めて示されたものであり、原告の防御方針に重大な影響を及ぼすものであったとして、手続違背の違法を認めた。以上から、取消事由2及び取消事由4に理由があるとして、審決を取り消した。