詐欺
判決データ
AI概要
【事案の概要】 磁気治療器の販売等を業とするA株式会社の代表取締役会長であった被告人が、同社の資金繰りがひっ迫し、顧客からの解約申入れに応じて元本を確実に返済し配当金の支払を継続できる見込みがなかったにもかかわらず、同社の業績が好調で財務基盤も安定しているように装い、顧客らに対して磁気治療器の業務提供誘引販売取引やリース債権譲渡取引に係る契約を勧誘し、年利6〜8.57%の配当金の支払と解約時の元本全額返還を約束して契約を締結させ、合計50回にわたり顧客23名から合計約1億6556万円の交付を受けた詐欺の事案である。同社は従前から高金利の配当と元本保証を約する取引を行い、元利金の支払原資を専ら新規の契約代金で賄ういわゆる自転車操業の状態にあり、遅くとも平成22年には債務超過に陥っていた。平成28年12月及び平成29年3月に消費者庁から二度の業務停止命令を受けたことを契機に金融機関からの新規融資も得られなくなり、顧客からの返金申請も増加していた。原審は被告人を懲役8年(求刑懲役10年)に処した。 【争点】 弁護人は、事実誤認及び量刑不当を主張した。事実誤認の主張として、本件各取引は磁気治療器の買戻特約付き売買契約であり投資取引ではないこと、犯行当時に同社が元本返済や配当金支払の見込みを欠く状況にはなかったこと、少なくとも被告人は業績が回復すると考えていたことから、欺罔の事実ないし故意がなく詐欺罪は成立しないと争った。量刑不当の主張として、直接の実行行為者である役員・従業員らも財務状況を知り得たのに被告人のみが起訴されており刑の公平性を欠くこと、長期の勾留や破産手続開始による社会的制裁を受けていること、高齢で健康状態が悪いことなどを指摘した。 【判旨(量刑)】 控訴棄却。事実誤認の主張について、同社の取引構造はもともと持続可能性を欠き破綻必至であった上、行政処分を契機に資金繰りがさらに悪化していたことは明らかであるとした。被告人は日々経理関係資料の報告を受け、財務担当者から資金繰り悪化の報告・相談を受けていたほか、公認会計士から近いうちに資金ショートすることが明白であると指摘されていたことなどから、欺罔の認識を有していたことも明らかであるとして、詐欺罪の成立を認めた原判決に誤りはないとした。量刑についても、被告人はいわゆるワンマン会社の代表者として業務全般を統括し、粉飾決算を指示して業績好調を装い、監査結果を顧客に通知しないよう工作するなど財務状況を積極的に隠蔽していたことから、被告人が責任を一手に担うべきは当然であり、検察官の訴追裁量も不当とはいえないとして、懲役8年とした原判決の量刑は重すぎて不当であるとはいえないと判断した。