契約無効確認等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 武雄市の住民である原告らが、同市とケーブルワン社との間で締結された「防災情報発信システム構築業務」の委託契約(業務委託料約5億7800万円、変更後約4億548万円)について、地方自治法96条1項5号(工事の請負)又は同項8号(動産の買入れ)に基づく議会の議決を経ずに締結された違法な契約であるとして、同法242条の2第1項4号に基づき、被告(武雄市長)に対し、市長Aへの損害賠償請求を求めた住民訴訟である。 本件契約は、市内全戸に有線方式の戸別受信機1万5000台を設置し、防災情報発信システムを構築する内容であった。令和元年8月の豪雨災害を契機に戸別受信機の全戸設置が議論され、令和2年3月の予算議決を経たものの、予算審議の段階では通信方式や契約相手方は未定とされ、6月議会で承認を得る予定と説明されていた。しかし市は、弁護士と協議の上、議会の議決に付さないこととし、同年7月にケーブルワンと本件契約を締結した。 【争点】 1. 本件契約が「工事の請負」又は「動産の買入れ」として議会の議決を要するか 2. 予算議決により実質的に議会の議決を経たといえるか 3. 市長Aの故意又は過失の有無 4. 損益相殺の可否 【判旨】 裁判所は原告らの請求を認容し、市長Aに対し約4億548万円を武雄市に支払うよう請求することを命じた。 争点1について、法96条1項5号の「工事」は建設工事に限定されず、戸別受信機の設置作業はケーブルの配線・分配等を要する「工事」に当たり、設置費用だけでも3億円を超え付随的とはいえないことから「工事の請負」に該当するとした。また、戸別受信機1万5000台(総額1億2900万円)の購入は「動産の買入れ」にも該当し、いずれの観点からも議会の議決を要するとした。 争点2について、予算審議の段階では通信方式・契約内容・契約相手方が未定であり、市担当者も6月議会で承認を得る予定と説明していたことから、予算議決は大枠の予算を通すためのものにすぎず、契約締結の適否について議決する認識はなかったとして、実質的な議決とは認められないとした。 争点3について、仕様書に議会の議決を要する旨が記載されていたこと等から、市長Aは議決の必要性を認識し得たにもかかわらず議決を経なかったとして過失を認めた。 争点4について、議会に議案が提出されていれば無線方式が採用された可能性が相当程度あり、有線方式のシステム構築が市の利得とはいえないとして損益相殺を否定した。