AI概要
【事案の概要】 本件は、「感圧転写式粘着テープ及び転写具」に関する特許(特許第5234556号)について、原告が特許無効審判を請求したところ、特許庁が「審判の請求は成り立たない」との審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許は、封筒の封緘等に用いられるアクリル系粘着剤を有する感圧転写式粘着テープに関するもので、粘着剤層の厚み寸法や塗布面積率等を所定の範囲に設定し、粘着剤ブロックを噛み合うように配置することで、剥離時に紙類の表層が粘着剤に付着して厚み方向に破断する「紙破現象」を起こし得るように構成したことを特徴とする。原告は、明確性要件違反(取消事由1)及び進歩性欠如(取消事由2)を主張して審決の取消しを求めた。 【争点】 1. 「紙破現象を起こし得るように構成している」との発明特定事項が明確性要件(特許法36条6項2号)に違反するか 2. 本件発明1ないし10が甲1発明(特開2001-192625号)及び周知技術に基づき当業者が容易に想到し得たものか 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。 明確性要件違反について、裁判所は、「紙破現象」とは本件明細書の定義どおり「粘着剤層を剥離させた際に紙類の表層が粘着剤に付着し紙類が厚み方向に破断する」現象を意味し、原告が主張する「通常の利用者が視認可能な態様で紙が破れること」という条件を付加して解釈する必要はないとした。そして、「紙破現象を起こし得るように構成している」との発明特定事項は、その他の構成要件を充足する感圧転写式粘着テープのうち紙破現象を起こし得るものを指すものとして技術的範囲は明確であり、発生割合や発生条件が請求項に特定されていなくても第三者に不測の損害を被らせるほど不明確とはいえないと判断した。 進歩性欠如について、裁判所は、相違点2(粘着剤層の厚み寸法)、相違点3(塗布面積率)及び相違点5(紙破現象を起こし得る構成)は、いずれも紙破現象の発現に関連するものとして一体的に判断すべきであるとした上で、甲1発明は専ら接着力の保持と糊切れ性の向上を目的とするものであり、粘着剤層の厚みや塗布面積率に着目して紙破現象を起こし得るように構成することについての記載も示唆もないことから、動機付けがなく、当業者が容易に想到し得たものとはいえないと結論付けた。