AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和4年3月24日午前10時57分頃、普通乗用自動車を運転し、片側2車線の見通しの良い一般道路において、信号機により交通整理の行われている交差点を直進しようとした際、運転席と助手席の間に置かれたゴミ箱に爪切りの中の爪を捨てることに気を取られ、約8.8秒間にわたり脇見運転をした。その結果、対面信号機の赤色表示を看過し、制動措置も減速もしないまま時速約50kmで交差点に進入し、青信号に従って横断歩道上を横断歩行中の小学生2名に自車前部を衝突させた。被害者Aは多発外傷により同日死亡し、被害者Bは全治約1か月を要する外傷性肝損傷等の傷害を負った。被害者らは通学路を通って下校中であり、青信号に変わってから約2秒待った後に横断を開始しており、何らの落ち度もなかった。なお、事故当時、被告人の隣の車線の車両は赤信号に従い横断歩道手前で停車しており、被告人車両はその停車車両を追い抜く形で横断歩道に進入して事故を起こしている。被告人にはこれまで7件の交通違反歴があり、うち3件は携帯電話等保持による違反で、本件の約4か月前にも同種の違反で検挙されていた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人の過失について、自動車運転上の最も基本的な注意義務である信号遵守義務に違反したものであり、見通しの良い直線道路で視認条件にも健康状態にも問題がなかったにもかかわらず、運転中に行う必要性の全くない些細な私事を優先させ、敢えて脇見を選択した運転態度には特に厳しい非難が向けられるべきであるとした。また、過去に複数回の脇見運転による違反歴がありながら運転態度を改めなかった点を踏まえ、本件は単発的な注意散漫とは異なり、道路交通に対する規範意識の乏しさが招いた事態であって、携帯電話等への脇見事案と質的に変わらない重過失の範疇に属するとした。結果の重大性については、被害者Aの生命が失われ、遺族が心療内科での治療を要する精神的苦痛を受けていること、被害者Bも心身に深い傷を負っていることを重くみた。一般情状として、被告人が当初から事故を認め反省の態度を示していること、任意保険による賠償が見込まれること、前科がないこと等を考慮したが、検察官の求刑(禁錮4年6月)では被害結果の重大性や遺族の峻烈な処罰感情が十分に反映されていないとして、求刑を上回る禁錮5年の実刑を言い渡した。