AI概要
【事案の概要】 申立人は、頚椎症性脊髄症による四肢体幹機能障害を患い身体障害者手帳1級の交付を受けた女性で、令和元年7月から生活保護を受給していた。申立人は生活保護開始時から自動車1台を保有しており、その使用許可を求めたが、処分行政庁(鈴鹿市福祉事務所)は自動車の保有を認めず、処分に係る見積書を2社以上提出するよう生活保護法27条1項に基づく指導(本件指導)を行った。申立人がこれに従わなかったため、処分行政庁は令和4年11月1日付けで生活扶助・住宅扶助・介護扶助・医療扶助の全てを停止する処分(本件停止処分)をした。申立人は本件停止処分の取消訴訟を提起するとともに、行政事件訴訟法25条2項に基づき、処分の効力の停止を求めた。 【争点】 ①本件停止処分により重大な損害を避けるため緊急の必要があるか、②執行停止により公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか、③本案事件について理由がないとみえるか。 【判旨】 裁判所は、申立てを認容し、本件停止処分の効力を第1審判決言渡し後60日が経過するまで停止した。①について、申立人には特段の収入や資産がなく、継続的な援助を期待し得る扶養義務者も見当たらないこと、障害の性質上月1〜2回の通院が必要であること、停止処分時の生活保護支給額が月額約8万2500円で預金残高が約3万4700円にすぎないことから、生活保護は健康で文化的な最低限度の生活を維持する上で必要不可欠であり、停止処分により直ちに生活を維持できなくなることは明らかであるとして、重大な損害を避けるための緊急の必要性を認めた。②について、効力を停止しても公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれは認められないとした。③について、処分行政庁が厚生事務次官通知等に従って自動車保有を認めなかったとしても、通達の合理性及び解釈の問題があり、また仮に自動車保有が認められないとしても、見積書の追加提出を求める指導への違反を理由に生活保護全体を停止したことの合理性は、現時点で明らかとはいえないとして、本案について理由がないとはいえないと判断した。