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【事案の概要】 平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴う津波により、被告(東京電力)が設置・運営する福島第一原子力発電所で大量の放射性物質が放出される事故(本件事故)が発生した。福島県南相馬市原町区内の避難指示解除準備区域(半径20km圏内)又は緊急時避難準備区域(20km圏外30km圏内)に居住していた原告ら140名が、避難生活に伴う精神的苦痛及びふるさと喪失・変容による精神的苦痛に対する慰謝料と弁護士費用の損害賠償を求めた事案の控訴審である。原審は原賠法に基づく予備的請求を一部認容し、原告ら137名と被告の双方が控訴した。被告は中間指針に従い、避難指示解除準備区域につき1人あたり850万円、緊急時避難準備区域につき1人あたり180万円等を既に支払っていた。 【争点】 主な争点は、(1)慰謝料の算定方法及び金額(被告の既払金で賠償責任が果たされているか)、(2)被告が支払った個別事情による増額分や財産的損害等の賠償金を慰謝料への弁済に充当できるか、(3)津波による自宅損壊等の個別事情により慰謝料を減額すべきか、であった。 【判旨】 仙台高裁は、慰謝料の算定にあたり、①避難を余儀なくされた慰謝料、②避難生活の継続による慰謝料、③故郷の変容による慰謝料の3つに区分して検討した。被告が平成20年4月には敷地高を超える津波の試算を受け取りながら、運転停止を避けたいという経営判断を優先して対策を先送りした重大な責任があると認定した。避難指示解除準備区域については①150万円②850万円③100万円の合計1100万円(原審1000万円から増額)、緊急時避難準備区域については①70万円②180万円③50万円の合計300万円(原審250万円から増額)の慰謝料を一律に認めた。弁済の抗弁については、既払金のうち「精神的損害(避難生活)」は控除するが、個別事情による増額分・財産的損害・住居確保費用等は別の損害に対する賠償であるとして慰謝料への充当を否定した。また、津波による自宅損壊があっても地域からの避難と共同生活喪失の原因は原発事故にあるとして慰謝料の減額を認めなかった。結論として、避難指示解除準備区域の原告に275万円、緊急時避難準備区域の原告に132万円の損害賠償を認容し、認容額合計は原審の約1億4609万円から約2億7929万円に増額された。