AI概要
【事案の概要】 財務省近畿財務局の上席国有財産管理官であったAは、森友学園への国有地売却に関する決裁文書の改ざん作業に関与させられた結果、平成29年7月頃にうつ病を発症し、自殺するに至った。Aの公務災害認定もなされている。Aの妻である原告は、当時財務省理財局長であった被告が公文書の改ざんを指示したことによりAにうつ病を発症させ自殺に至らせたと主張し、被告個人に対し、民法709条に基づく損害賠償として1650万円及び遅延損害金の支払を求めた。なお、本件訴訟では当初、国に対する国家賠償請求も併合提起されていたが、国は令和3年12月に請求を認諾している。 【争点】 1. 被告の不法行為責任の有無(決裁文書等の改ざん指示について、公務員個人としての対外的責任を認めるべきか) 2. 被告の説明義務及び謝罪義務の違反の有無 3. 損害額 【判旨】 裁判所は原告の請求を棄却した。 争点1について、裁判所は、公権力の行使に当たる国の公務員がその職務を行うについて故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合、国が賠償責任を負い、公務員個人はその責めを負わないとする判例法理(最判昭和30年4月19日等)を確認した。原告が主張する被告の行為は、理財局長という立場を利用し職務上の命令として行った改ざん指示であり、国家賠償法1条1項の適用対象となる行為であるから、被告個人は民法709条に基づく損害賠償責任を負わないとした。 原告は、違法行為の抑制や権限濫用の防止の必要性と萎縮効果との比較考量により、公務員の対外的個人責任を認めるべきであると主張したが、裁判所は、我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は被害者の損害補填を目的とするものであり、加害者に対する制裁や一般予防を目的とするものではないとした上で、国に対して国家賠償法に基づく損害賠償請求が可能である以上、被害者の保護に欠けるところはないと判断した。また、国が既に請求を認諾していることも踏まえ、原告の主張を退けた。 争点2について、裁判所は、被告が改ざん指示行為について損害賠償責任を負わない以上、原告に対する説明義務や謝罪義務が信義則上発生するとは考えられないとして、この主張も退けた。