特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「スクリューオーガ用掘削ヘッド」に関する特許権(特許第4147314号)を有する原告(土木・建設機械の製造販売会社)が、被告(建設機械の製造販売会社)に対し、被告が製造販売する掘削ヘッド(被告製品1~5)が本件特許の技術的範囲に属すると主張して、特許法100条1項・2項に基づく販売等の差止め及び製品の回収、並びに不法行為に基づく損害賠償293万6670円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。本件特許の発明は、基軸の外周部に外径の等しい3条の螺旋翼を設け、その先端部に複数のコニカルビットを取り付け、当該コニカルビット群により「中央部が突出する概略円錐状」に形成された掘削ヘッドを特徴とするものである。被告各製品が構成要件A~C及びEを充足することは争いがなく、構成要件D(「該複数のコニカルビット群により、中央部が突出する概略円錐状に形成されていること」)の充足性が主たる争点となった。 【争点】 1. 本件発明の技術的範囲への属否(構成要件Dの充足性) 2. 本件発明の無効理由の有無(明確性要件違反、サポート要件違反、進歩性欠如) 3. 損害の発生及びその額 4. 差止め等の必要性の有無 【判旨】 請求棄却。裁判所は、構成要件Dの「中央部が突出する概略円錐状」の意義について、請求項の文言、本件明細書の記載内容及び出願経過を検討した。本件明細書によれば、その技術的意義は、3条の螺旋翼の外径を変えることなく、コニカルビット群により基軸先端方向に向かって径が小さくなる円錐状の形状にすることで、穴曲がりを防ぎつつ掘削効率を高めることにあると認定した。また、出願経過において、原告が引用発明との相違点として構成要件Dを付加補正し、ヘッド先端部が全体として中央部が突出する概略円錐状の外形であることを特定した経緯も考慮した。その上で、被告各製品の3条の螺旋翼先端部に取り付けられたコニカルビットは、いずれも側面視を含む全体形状において直線、緩やかな曲線又は点を形成するにすぎず、コニカルビットのみにより基軸先端方向に向かって径が小さくなる円錐状を形成しているとはいえないと判断し、構成要件Dの充足を否定した。原告が提出した公開特許公報、パンフレット、アンケート結果、大学教授の意見書等についても、いずれも当業者が被告各製品のようなコニカルビットの配列を「概略円錐状」と理解することを裏付けるものではないとして排斥した。構成要件Dが充足されない以上、その余の争点(無効理由、損害額、差止めの必要性)について判断するまでもなく、原告の請求をいずれも棄却した。