AI概要
【事案の概要】 被告人は、長男A(当時3歳)の母親である。Aには精神発達遅滞及び自閉スペクトラム症の疑いがあり、被告人は3人の子の育児に当たりながら、障害を抱えるAの養育に日々疲弊していた。被告人自身も双極性障害II型の精神障害を有しており、行政からAに対する一定の支援は受けていたものの、障害を抱える子の養育や被告人自身の精神障害に対する家族の十分な理解や支援が得られない状況にあった。こうした中、被告人は次第に孤立感を深め、Aの将来を悲観するとともに、養育の負担から自らを解放したいとの思いを募らせていった。 平成29年11月24日午後6時頃から同日午後6時30分頃までの間、被告人は京都府木津川市内の自宅浴室において、就寝中であったAを突如連れ出し、殺意をもって浴槽に張った湯水にAの全身を沈め、その場でAを溺死させて殺害した。本件犯行は、事前に計画されたものではなく、また日常的な虐待を伴うものでもなかったが、わずか3歳の幼児の生命が奪われた結果は極めて重大である。 【判旨(量刑)】 裁判所は、まず犯行動機について、被害者の養育に疲弊し将来を悲観するとともに自らを解放するために殺害を決意したという動機自体には酌むべき点はないと判示した。しかしながら、被告人が懸命に育児に当たっていたにもかかわらず、家族からの十分な理解や支援が得られず、被告人自身の精神障害もあいまって追い詰められていった動機の形成過程には、一定の酌量すべき事情があると認めた。 量刑判断においては、同種事案(殺人・単独犯・凶器等なし・被害者が被告人の子・処断罪と同一又は同種の罪の件数1件)と比較検討し、執行猶予を付すような軽い部類の事案ではないものの、実刑に処すべき類型の中では中程度ないし多少軽い部類に位置づけられるとした。その上で、殺人罪の法定刑の最下限をやや下回る刑に酌量減軽するのが相当であると判断した。 さらに、被告人に前科がないこと、後悔の念を有し今後精神障害の治療に取り組む意思を示していること、被告人の帰りを待つ家族がいることなどの諸事情も併せ考慮し、求刑懲役8年に対し、懲役4年6月(未決勾留日数中250日算入)を言い渡した。