傷害、暴行(変更後の訴因|暴力行為等処罰に関する法律違反、認定罪名|傷害、暴行)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、福岡県宗像市内の保育園で副園長兼保育士として勤務していた者である。平成30年6月から令和元年9月にかけて、同僚保育士2名(C及びF)に対する暴行・傷害4件(顔面を平手でたたく、下顎を押す、両頬をたたく、レポート用紙つづりで顔面をたたく)と、園児3名(A・D・G・H、当時3〜6歳)に対する暴行・傷害4件(平手で頬をたたく、背中・頭部を押して転倒させる、胸ぐらをつかんで引っ張る、着衣をつかんで室外へ引っ張り出す)の合計8件で起訴された。検察官は当初、暴力行為等処罰に関する法律違反(常習傷害罪)として訴因変更を請求し許可されたが、原審は常習性を否定し、個別の傷害罪・暴行罪の併合罪として有罪判決を言い渡した。被告人側が控訴した。 【争点】 ①第4事件の公訴事実(犯行日が約1か月の幅)が訴因の特定を欠き不法な公訴受理に当たるか、②常習傷害罪の訴因変更許可決定を取り消さなかった訴訟手続の法令違反があるか、③第1〜第8事件の各暴行の事実誤認があるか、④第7・第8事件(園児に対する行為)が暴行に当たらず正当な保育行為として違法性が阻却されるか。 【判旨(量刑)】 控訴棄却。 ①訴因の特定について、証拠上絞り込める範囲で犯行日時が特定されており、冒頭陳述で暴行の機会も具体的に示されているから、防御に支障はなく、訴因の特定に欠けるところはない。②常習傷害罪への訴因変更許可決定は適法になされたものであり、証拠調べの結果常習性が認められなくても決定が違法となるものではない。変更後の訴因でも各事実は個別に特定されており審判対象は画定されている上、手続保障も確保されているから、決定を取り消す義務はない。③被害者らの証言について、保育士Cの唇の写真や整形外科医の証言、保育士FのLINE記録やレポート用紙のファンデーション鑑定結果、園児A・Dの母親による事件直後の写真撮影や自発的申告、検察官面接の適切な実施方法等を踏まえ、各証言の信用性を認めた原判決の判断は論理則・経験則に照らし不合理ではない。④園児に対する第7・第8事件は、幼児の意思によらない身体の移動を生じる有形力の行使であり暴行に該当する。口頭での働きかけを試みることなく威圧的態様の行為に出ており、切迫した危険もなかったから正当行為には当たらない。