AI概要
【事案の概要】 大手電気通信事業者A社に勤務していた被告人が、同業他社F社への転職を目前に控えた令和元年12月30日から31日にかけて、A社の営業秘密であるネットワーク情報ファイル3点(全国約16万箇所の基地局位置情報・周波数帯・回線種別・月額料金・5G化検討状況等を含むエクセルファイル、及びネットワーク構成をGoogle Earth上で表示するkmzファイル2点)を、自己の管理するGoogleドライブやメールアドレスに転送・保存して複製を作成し、営業秘密を領得したとして、不正競争防止法違反に問われた事案。 【争点】 ①本件各ファイルに秘密管理性・非公知性・有用性が認められ、営業秘密に該当するか、②被告人が営業秘密該当性を認識していたか(故意の有無)が争われた。弁護人は、ファイルに「部外秘」等の表示やパスワードがなくアクセス制限も不十分であったこと、基地局位置情報はインターネット上で特定可能であること、他社には利用価値がないことなどを主張した。 【判旨(量刑:懲役2年・罰金100万円、懲役につき執行猶予4年)】 裁判所は、秘密管理性について、A社では情報管理規程・入退社時の誓約書・営業秘密に関する研修等の体制面で相応の秘密管理措置が採られていたと認定した。ファイル自体に部外秘表示やパスワードがなかった点は認めつつも、その情報の内容・性質からして、少なくともネットワーク構築に関与する従業員であれば秘密管理意思を容易に認識可能であったとして、秘密管理性を肯定した。非公知性については、一部の基地局情報がインターネット上で特定できるとしても、正確性・網羅性が担保されたものではなく、本件ファイルの情報とは質的に異なるとして認めた。有用性については、営業秘密保有企業の事業活動に使用・利用されていれば基本的に保護の必要性を肯定でき、取得者が有効活用できるかどうかには左右されないとの判断枠組みを示した上で、同業他社にとっても競争上の優位性をもたらす情報であるとして有用性を肯定した。故意についても、被告人がファイルにネットワーク構成情報が含まれていることを認識していた以上、営業秘密該当性を基礎付ける事実の認識に欠けるところはなかったとした。量刑については、犯行の悪質性と身勝手な動機を指摘しつつ、不正の利益を得る目的が強いものではなく前科もないことから、求刑どおり懲役2年・罰金100万円とし、懲役刑につき4年間の執行猶予を付した。