AI概要
【事案の概要】 長崎市に投下された原子爆弾による被爆者の子(被爆二世)又はその訴訟承継人である原告らが、原爆放射線の遺伝的(継世代)影響を否定できないにもかかわらず、被爆二世を被爆者援護法の援護対象に含める立法措置を講じないことが、憲法13条(人格権)及び憲法14条1項(平等原則)に違反する立法不作為であると主張し、国に対し、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料各10万円等の支払を求めた事案である。 【争点】 ①被爆二世に対する立法不作為の違憲性(憲法13条・14条1項違反の有無)、②国家賠償法1条1項の違法性、③損害の有無。 【判旨】 請求棄却。 裁判所は、まず立法不作為の違法性の判断枠組みとして、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害することが明白な場合等に限り、例外的に国賠法上違法となるとした(最高裁平成17年判決参照)。 憲法13条違反について、原告らが主張する「遺伝的影響が否定できないことによる健康不安に対して国の援護を求める権利」は、その内容が未だ抽象的であり、憲法13条が保障する基本的人格権に包摂される具体的権利とはいえず、同条から国に立法措置を求める権利を導き出すこともできないとして、憲法13条違反を否定した。 憲法14条1項違反について、被爆者援護法は社会保障法的性格と国家補償的配慮という複合的性格を有し、同法1条3号の「被爆者」とは原爆の放射能により健康被害が生ずる可能性がある事情の下に置かれていた者をいうと解されるところ、被爆二世はその身体に直接原爆の放射能を被曝した事情は認められず、遺伝的影響についてはその可能性を否定できないというにとどまると認定した。動物実験では放射線照射による突然変異誘発等が示されているものの、ヒトへの適用には疑義があり、放影研による被爆二世の疫学調査でも有意な遺伝的影響は確認されていないことから、被爆二世を援護対象に含めるか否かは立法府の総合的政策的な合理的裁量判断に委ねられるとし、被爆二世を被爆者に含めないことは合理的理由のない差別的取扱いには当たらないと判断した。「みなし被爆者」との差異についても同様の理由から違憲とは認められないとした。 以上より、立法不作為は違憲とはいえず、国賠法1条1項の適用上も違法とは認められないとして、原告らの請求をいずれも棄却した。