AI概要
【事案の概要】 東京2020オリンピック・パラリンピック大会の選手村として使用された後、一般向け分譲マンション「HARUMI FLAG」として改築される施設について、各物件の売買契約を締結した原告ら(28名)が、売主である被告ら(デベロッパー)に対し、当初の引渡予定日(令和5年3月27日)までに物件を引き渡さないことが履行遅滞に当たると主張して、債務不履行に基づく損害賠償(賃料相当損害金等)の連帯支払を将来の給付の訴えとして求めた事案である。東京2020大会がコロナ禍により1年延期されたことに伴い、引渡予定日も約1年後の令和6年3月25日に変更されていた。 【争点】 原告らの各請求権が、将来の給付の訴え(民訴法135条)の基礎となる請求権としての適格を有し、かつあらかじめ請求をする必要があるか。 【判旨】 裁判所は、本件訴えをいずれも却下した。 まず、将来の給付の訴えが許容される要件として、最高裁昭和56年12月16日大法廷判決を引用し、請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在してその継続が予測されること、債務者に有利な事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られること等を示した。 その上で、被告らは引渡遅延について帰責事由がないとの抗弁を主張しているところ、この抗弁の成否の判断には、口頭弁論終結時までの事情のみならず、今後の新築工事の進捗、検査済証の取得、登記手続等の将来発生する事情も少なからず影響し得ることから、請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在しているとは認められないとした。 また、慰謝料請求については、履行遅滞が生じれば直ちに遅滞期間に比例して認められるものではなく、現実の遅滞期間や生活状況等の将来の事情を踏まえる必要があるとし、賃料収入相当額の請求についても、選手村として使用された希少性を有する物件の賃料算定が容易でなく、周辺地域の賃料相場も流動的な社会経済情勢に左右されることから、いずれも将来の給付の訴えの請求適格を欠くと判断した。