AI概要
【事案の概要】 全日本A連合会(以下「A」)の会長であった被告人が、Aの保有する預金残高が実際よりも多額であるかのように装うため、預金通帳や残高証明書を偽造した無印私文書偽造・有印私文書偽造の事案である。 被告人は、Aの事務局長兼会計責任者であったB及び知人のCと共謀の上、令和2年10月下旬頃から同年11月中旬頃までの間に、東京都港区内において、行使の目的で合計7件の文書偽造を行った。具体的には、D銀行発行の普通預金通帳について、別途入手した通帳用紙にパソコンとプリンタで日付や金額等を印字したものと差し替えて取引履歴96件を偽造したほか、同銀行発行の定期預金通帳に取引履歴3件を印字して追記する方法で偽造した。さらに、F銀行発行の定期預金通帳にも同様の方法で取引履歴1件を偽造し、G銀行発行の普通預金通帳についても用紙を差し替えるなどして取引履歴3件を偽造した。 加えて、被告人らは残高証明書3通も偽造した。D銀行、F銀行及びG銀行がそれぞれ発行した残高証明書をスキャナーでパソコンに読み込み、金額を改変するなどの画像加工を行ってプリンタで印字した上、各銀行名が刻された印鑑を押印して、Aや被告人が多額の預金を保有する旨の残高証明書を作成した。D銀行の残高証明書では普通預金合計約7381万円及び定期預金3000万円、F銀行では普通預金約5336万円、G銀行では普通預金1億円を保有する旨の内容に偽造された。 被告人がこのような犯行に及んだ背景には、Aの資金が流出している事実があり、会長としてその発覚を恐れた自己保身の目的があった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、銀行発行の預金通帳の取引履歴欄や残高証明書という重要な事実証明に係る文書を偽造した本件について、偽造された文書の数が多く、いずれも精巧に偽造されていることから、文書に対する社会的信用を害する危険性が高い犯行であると評価した。また、被告人はAの会長として適正に運営すべき立場にありながら、資金流出の発覚を恐れて自己保身のために通帳等の偽造を決意し、共犯者に偽造を依頼しており、犯行に至る経緯や動機に酌量すべき点はなく、本件犯行において中心的な役割を果たしたとして強い非難に値するとした。 他方で、被告人が事実関係を認めて深く反省していること、前科がないこと、妻が監督を約束していること等の酌むべき事情も認められるとし、求刑どおり懲役1年6月に処した上で、未決勾留日数中40日を算入し、3年間の執行猶予を付した。偽造に係る通帳4通及び残高証明書3通の各偽造部分については没収を言い渡した。