不当利得返還請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「ページング方法および装置」に関する特許(特許第3287413号)の特許権者の承継人である原告(米国法人)が、被告(国内通信事業者)に対し、被告によるLTE通信方式を利用した無線通信ネットワークサービス(「4G LTE」)の提供が原告の特許発明を実施するものであるとして、不当利得返還請求権に基づき、実施料相当額の一部である1億円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。本件特許は、双方向ページングシステム(いわゆるポケットベルの発展型)において、ページャ(端末)と中央局との間で、リクエストエネーブル信号、リクエスト信号、許可信号、ページングメッセージを順次送受信する方法に関するものであり、時分割共有技術等により少ない周波数で通信を実現する点に技術的意義がある。原告は、LTE通信方式における基地局(eNodeB)と携帯端末(UE)間のスケジューリングリクエスト信号やDCI信号等の送受信が本件特許の構成要件を充足すると主張した。争点は多岐にわたり、原告の実在性、特許権の帰属、技術的範囲の属否、均等侵害の成否、無効理由の存否、訂正による無効理由の解消等の15の争点が設定された。 【争点】 主要な争点は、被告のLTE通信方式が本件各発明の「双方向ページングシステム」に該当し、その技術的範囲に属するか否かである。原告は、「双方向ページングシステム」を「回線交換方式を使用しないでも動作できる包括的な双方向無線データ送受信システム」と広く解釈すべきと主張し、LTE通信方式もこれに含まれると主張した。これに対し被告は、「双方向ページングシステム」は短文等の呼出メッセージによる無線呼出システム(ポケットベル)に限定されると反論した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。まず、本件出願日(平成7年)当時、当業者は「ページングシステム」を、移動通信システムのうち短文などの呼出メッセージによる無線呼出システムであり、その端末である「ページャ」にアックバック(受信通知)等の簡単な返信機能を付与したものと理解していたと認定した。本件明細書においても、「ページャ」は移動無線電話と区別され、「双方向ページングシステム」は電話システムとは独立して動作するものとして記載されていた。そして、LTE通信方式は第4世代移動通信システムとして位置付けられるものであり、短文等の呼出メッセージによる無線呼出システムとは本質的に異なるため、「双方向ページングシステム」には該当しないと判断した。均等侵害についても、LTE通信方式はおびただしい数の周波数を用いるものであり、少ない周波数の使用を実現するという本件各発明と同一の作用効果を奏しないとして、これを否定した。以上から、被告方法は本件各発明の技術的範囲に属しないとして、その余の争点について判断するまでもなく請求を棄却した。