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【事案の概要】 被告人は、令和4年9月18日午後10時頃、石川県野々市市の自宅から携帯電話で大阪拘置所に電話をかけ、同拘置所の職員に対し、安倍晋三元首相を殺害した被疑者Cについて「Cは殺さないといけない」「私も元自衛官ですから。国家に刃向かう者は処罰しないといけないと思っています。爆弾だって作れます」「Cを殺しに行くつもりでいます」などと述べた。この電話を受け、大阪拘置所では出入口の監視を強化し、外部委託していた施設外周の巡回警備を処遇部門の警備隊員が手分けして行うことを余儀なくされるなど、同月20日から27日までの間、正常な業務の遂行に支障が生じた。被告人は威力業務妨害罪で起訴された。 なお、被告人は令和4年6月にも、警視庁に電話をかけて大使館を襲撃するなどの虚偽申告を行い、偽計業務妨害罪により罰金刑に処せられた前科があった。 【判旨(量刑)】 大阪地方裁判所は、被告人を懲役1年6月(執行猶予3年、保護観察付き)に処した(求刑どおり懲役1年6月)。 量刑判断において、裁判所はまず犯行の悪質性を指摘した。本件犯行により大阪拘置所では警備体制の強化を余儀なくされ、警備隊本来の業務に支障が生じるなど職員の業務に与えた悪影響は大きく、まことに悪質な犯行であるとした。動機については、書物等で形成した思想や社会的風潮への不満を背景に、飲酒により気が大きくなって犯行に及んだものであり、酌むべき事情は全く見受けられないとした。加えて、わずか3か月前に同種の偽計業務妨害罪で罰金刑に処せられていたことも考慮し、被告人の意思決定に対しては強い法的非難が向けられるべきであるとして、刑事責任は重いと判断した。 他方、服役前科がないこと、犯行を認めて反省の態度を示していること、飲酒をせず中断していた精神疾患の通院治療を継続するなど再犯防止の取組を行う意思を示していること、父親が同居して監督する旨申し出ていることなどの事情を考慮し、今回に限り刑の執行を猶予して社会内での自力更生の機会を与えることが相当とした。さらに、事態の重大性を自覚させ更生を図るため、保護観察による指導・監督が必要であると判断した。