AI概要
【事案の概要】 原告(医師紹介事業を営む株式会社)の従業員Dが退職を申し出たところ、原告はDに対し慰留及び業務引継ぎの交渉を行い、退職を認めない旨や退職を強行すれば500万円の損害賠償を請求する旨を記載した通知書の受領とサインを求めた。Dは友人として被告(グローバル人材紹介会社の日本法人)の従業員Aに電話で相談し、Aはサインの必要はないと助言した上で、同僚2名と共に原告事務所を訪問した。原告は、被告従業員らが原告に無断で事務所に立ち入り大声で威圧したこと、及びDに引継ぎを拒絶するよう教唆したことが業務妨害の不法行為に当たるとして、被告に対し140万円の損害賠償を求めて提訴した。 【争点】 第1の争点は、被告従業員らの原告事務所への立入り及びDの業務引継ぎ拒絶について、被告に不法行為(民法709条)又は使用者責任(同715条)が成立するか否かである。第2の争点は、原告に損害が発生したか及びその額である。原告は、事務所立入りにより従業員52名の業務が停止したとして約34万円、Dの引継ぎ拒絶によりDに支払った給与約280万円が無駄になったとして損害を主張した。これに対し被告は、立入りは平穏なものであり退去要求もされていないこと、引継ぎ拒絶はD自身の意思によるもので被告の指示はないことを主張した。 【判旨】 裁判所は原告の請求を棄却した。まず事務所立入りについて、被告従業員らはDからの要請に応じて原告事務所を訪問し、エレベータを降りた付近で原告代表者らと問答したに過ぎないと認定した。被告従業員らが原告従業員の執務スペースにまで立ち入って大声で威圧したこと、原告から退去を求められたのに応じなかったこと、その他原告の業務が妨害されたことを窺わせる証拠はないと判断した。また、Dが友人を呼んでよいとされたことを受けて被告従業員らに来訪を要請した経緯からすれば、立入りが不法な目的や手段によるものとは認められないとした。次にDの引継ぎ拒絶についても、被告ないし被告従業員らがDに引継ぎをしないよう指示・教唆したことを窺わせる証拠はないとして、原告の主張を排斥した。以上から、不法行為に基づく損害賠償請求権は認められないと結論づけた。