損害賠償請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4ネ10059
- 事件名
- 損害賠償請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2022年12月26日
- 裁判官
- 本多知成、浅井憲、勝又来未子
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、芸能事務所である一審被告会社との間で専属的マネージメント契約を締結し、バンド「A」として活動していた一審原告ら4名が、同契約終了後にバンド名を使って活動を継続しようとしたところ、一審被告らが関係者に対し、契約上の競業避止義務により一審原告らは活動できないこと、バンド名の商標権は一審被告会社に帰属すること、アーティスト写真の著作権も一審被告会社にあること等を記載した文書やメールを多数送付し、ライブハウスやチケット販売会社等に対して公演の中止や契約解除を求めたことが、一審原告らの営業権や名誉・信用を侵害する不法行為に当たるとして、損害賠償を求めた事案である。一審原告らはヴィジュアル系バンドとして約7年間活動し、シングルがオリコン週間ランキング8位を記録するなど一定の知名度を有していた。一審では各22万円の損害賠償が認容されたが、双方が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)一審被告代表者がニュースサイトに記事の取下げを要請したか、(2)一審被告らの各通知・要請が不法行為に該当するか(競業避止条項の有効性、バンド名に関する権利の帰属、写真の著作権の帰属)、(3)損害の発生及びその額である。特に、契約終了後6か月間の競業避止義務を定めた条項の有効性と、バンド名に係るパブリシティ権の帰属が中心的な争点となった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原判決を変更し、一審原告らの請求を全部認容した(各99万円)。まず、競業避止条項について、先行投資の回収という目的と実演活動の禁止との間に因果関係がなく、約7年間の契約期間を経て投資回収は終了していると考えられることから、制約に合理性がないとして公序良俗に反し無効と判断した。次に、バンド名について、グループ名はその構成員の集合体の識別情報として各構成員を容易に想起し得る場合にはパブリシティ権の対象となるとした上で、パブリシティ権は人格権に由来する権利であって一審被告会社に譲渡できるものではなく、契約書にも契約終了後のパブリシティ権の行使を制限する根拠となる記載はないとして、一審被告会社にはバンド名の排他的使用権がないと認定した。写真の著作権についても撮影者に帰属すると認めた。その上で、一審被告らの各通知及び要請は、事実と異なる内容により一審原告らの活動を妨害し、営業権を侵害するとともに名誉・信用を毀損するものであり、不法行為に該当すると判断した。損害額として、バンド名を使用できなかった約8か月半の財産的損害(月10万円相当)、グッズの仕入れ費用、慰謝料各20万円、弁護士費用各9万円を認め、各99万円の賠償を命じた。