発信者情報開示請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被控訴人(一般社団法人)は、氏名不詳者がツイッター上に投稿した記事(本件記事)が自己の著作物に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するものであるとして、経由プロバイダである控訴人(NTTドコモ)に対し、プロバイダ責任制限法に基づき発信者情報の開示を求めた。被控訴人は、仮処分決定を経てツイッター社から開示を受けたIPアドレスの割当先を調査し、控訴人に割り当てられた73個のIPアドレスのうち、保存期間内で通信記録として特定可能な2件のログイン情報について開示を請求した。原審(東京地裁)が被控訴人の請求を認容したため、控訴人が控訴した。なお、当審において令和4年10月1日施行の改正プロバイダ責任制限法が遡及適用されることについては当事者間に争いがなかった。 【争点】 1. 本件ログイン情報が改正法における「侵害関連通信」に該当するか(本件ログインは本件投稿から4か月以上経過しており、控訴人以外のプロバイダを経由したログインも多数存在していた) 2. 被控訴人が本件文書の著作権を有するか(本件文書は被控訴人の法人設立前に設立準備中の協議会において作成されたものであった) 【判旨】 知財高裁は、控訴を棄却し、原判決を維持した。 争点1について、裁判所は、ログイン情報に係る送信と侵害情報に係る送信との「相当の関連性」の有無は、同一の発信者によるものである高度の蓋然性があることを前提として、通信記録の保存状況を踏まえ、侵害情報に係る送信と保存されているログイン情報とが開示可能な範囲内で最も時間的に近接したものであるかなどの諸事情を総合勘案して判断すべきであり、時間的に近接していないというだけで関連性が否定されるものではないと判示した。本件ログインは投稿から4か月以上経過していたが、本件アカウントが複数人により管理されていたとは認め難く、ログインと近接する時期に関心事が共通する投稿がされていたことから同一人物による利用と認定された。また、スマートフォンやフリーWi-Fiの普及に鑑みれば、同一個人が他のプロバイダ経由でログインすることは不自然ではないとして、控訴人の主張を退けた。 争点2について、法人格取得前の団体の活動に関係して取得した財産関係は、設立準備行為に関係するか否かにかかわらず、権利能力なき社団と法人格取得後の団体との間の合意によるものであるとした上で、本件協議会と被控訴人が実質的に同一の事業活動を行ってきたこと、著作権の帰属先が失われることなどを考慮し、著作権は被控訴人に当然に承継されたと判断した。