原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1行コ107
- 事件名
- 原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件
- 裁判所
- 大阪高等裁判所
- 裁判年月日
- 2021年1月14日
- 裁判官
- 大島眞一、橋詰均、佐藤克則
AI概要
【事案の概要】 広島原爆の被爆者である控訴人が、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づき、糖尿病及び肝機能障害(慢性肝炎)を申請疾病として原爆症認定を申請したところ、厚生労働大臣から申請却下処分を受けたため、同処分の取消しを求めた事案の控訴審である。控訴人は昭和20年8月6日、2歳時に爆心地から約1.5kmの自宅屋外で被爆し、被爆後は自宅近くの防空壕で過ごし、池の鯉や井戸水を摂取するなど、内部被曝の可能性がある環境で生活した。控訴人は40歳代後半で糖尿病を発症し、平成元年から健康管理手当の支給を受けていたが、さらに平成21年に糖尿病を申請疾病とする原爆症認定を申請し、同年9月に肝機能障害を追加した。原審は控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が処分取消部分について控訴した。 【争点】 1. 放射線起因性の判断枠組み 2. 申請疾病(慢性肝炎・糖尿病)の原爆症認定要件該当性(放射線起因性及び要医療性) 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、放射線起因性の判断について、被爆の程度と科学的知見を中心としつつ、疾病の症状の推移、病歴、他原因の有無等を総合的に判断すべきとし、医療分科会が策定した「新しい審査の方針」(本件審査方針)に沿って判断するのが相当とした。 慢性肝炎(肝機能障害)については、本件審査方針が爆心地から約2.0km以内の被爆者の慢性肝炎について積極的に放射線起因性を認定するとしていることから、控訴人の慢性肝炎の放射線起因性を肯定した。被控訴人(国)が主張した「慢性肝炎はウイルス性等に限定され脂肪性肝疾患は含まれない」との主張は、厚生労働省自身の解説文書と整合しないとして排斥した。しかし、要医療性については、控訴人のNAFLDは概ね軽度で経過観察にとどまっており、NASHへの移行等の重大な結果が生じる医学的蓋然性が高い状況とはいえず、経過観察が積極的治療行為の一環と評価できる特別の事情は認められないとして、否定した。 糖尿病については、要医療性は認められるものの、放射線起因性について、膵臓の放射線感受性が低いこと、被爆者と一般の糖尿病有病率に有意差がないとする研究、控訴人が特定のHLA遺伝子タイプを有しないこと等から、控訴人が援用する疫学的知見も放射線治療による高線量被爆の症例や動物実験であり原爆の低線量被爆とは前提が異なるとして、放射線起因性を否定した。結局、慢性肝炎は放射線起因性はあるが要医療性がなく、糖尿病は要医療性はあるが放射線起因性がないとして、いずれの申請疾病も原爆症認定の処分要件を充足しないと判断し、控訴を棄却した。