怠る事実の違法確認等請求事件(住民訴訟)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 平成30年6月18日に発生した大阪府北部地震(最大震度6弱)により、高槻市立寿栄小学校のプール外周北面に設置されていたブロック塀(路面からの高さ約3.5m)が倒壊し、通学路を歩いていた小学4年生の児童が下敷きとなって死亡する事故が発生した。高槻市は、ブロック塀の設置又は管理に瑕疵(国家賠償法2条1項)があったと判断し、児童の遺族と和解契約を締結して解決金約1億30万円を支払った。 本件は、高槻市の住民である原告が、地方自治法242条の2第1項3号に基づく住民訴訟として、(1)法定点検の業務委託を受けた補助参加人ら3社及びアルト社がブロック塀の点検義務を怠った債務不履行又は不法行為責任を負う、(2)完了検査を担当した市職員が重過失により点検項目の漏れを看過した損害賠償責任を負う、(3)教育長が検査体制構築義務を怠った不法行為責任を負う、(4)日常点検を行った市職員が注意義務を怠った国家賠償法2条2項の求償責任を負うと主張し、高槻市がこれらの者に対する損害賠償請求を怠ることの違法確認を求めた事案である。 【争点】 (1)点検業務受託者の法定点検の債務内容に耐震対策状況の点検・報告や建築基準法不適合の指摘義務が含まれるか。(2)完了検査を行った職員の検査義務の内容・範囲と重過失の有無。(3)教育長の体制構築義務の存否。(4)日常点検を行った職員の注意義務の内容・範囲と因果関係の有無。 【判旨】 請求をいずれも棄却した。 争点(1)について、本件各業務委託契約の内容は建築基準法12条2項に基づく法定点検、すなわち損傷・腐食その他の劣化状況の点検に限られ、民間建築物の定期調査で求められる耐震対策状況の点検・報告は含まれないと認定した。また、ブロック塀は外観上建築基準法施行令の構造規定に適合しない状況にあったものの、同施行令62条の8ただし書(構造計算により安全が確認された場合の適用除外)の有無は外観上判断できないため、受託者に建築基準法不適合指摘義務を課す根拠はないとした。さらに、2社については点検未実施を認めつつも、多数の点検事項のごく一部の未履行にとどまるため業務委託料全額が損害とはならず、かつ瑕疵担保条項による1年の除斥期間が経過しているとした。もう1社については点検を実施したと認定し、債務不履行を否定した。 争点(2)について、仮に検査職員の完了検査に問題があったとしても、法定点検では内部構造の不良箇所(倒壊の主原因)は確認できず、完了検査と事故発生・解決金支払との間に因果関係がないとした。業務委託料相当額についても消滅時効の完成を認めた。 争点(3)について、法定点検の具体的な対象の特定自体が受託業務の一部であり、学務課の検査方法が直ちに違法とはいえないとして、教育長の体制構築義務を否定した。 争点(4)について、市職員による点検は校長からの口頭依頼に基づく当日その場での確認にとどまり、耐震対策の点検や精密検査を義務付けられていたとはいえないとした。加えて、倒壊の主原因は接合筋の設計・施工上の瑕疵や腐食という内部構造の不良であり、目視等による点検では確認できないものであったから、仮に点検に不備があっても事故との因果関係は認められないとした。