特許権侵害に基づく不当利得返還等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(インターネット関連サービス会社)は、ウェブページ閲覧時にユーザの発信地域を判別し、地域に対応した情報を提供する方法及び装置に関する特許権(特許第3254422号、「ウェブページ閲覧方法およびこの方法を用いた装置」)を有していた。本件特許は、IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したデータベースを用いてユーザの発信地域を判別し、その地域に対応したウェブ情報を選択して送信するという技術思想に関するものである。原告は、被告(旧ヤフー株式会社、現Zホールディングス株式会社)が運営する「Yahoo! JAPAN」等において提供される地域ターゲティング広告(YDN、プレミアム広告)及び天気予報サービスが原告の特許権を侵害すると主張し、特許法102条3項に基づく損害賠償請求又は民法703条・704条に基づく不当利得返還請求として30億円の支払を求めた。 【争点】 (1) 被告方法等が本件各発明の構成要件を充足するか(特に「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」の解釈及び充足性)、(2) 本件特許が無効にされるべきか(先行文献に基づく新規性・進歩性の欠如、サポート要件違反、実施可能要件違反、補正要件違反、明確性要件違反)、(3) 損害額。 【判旨】 裁判所は、構成要件中の「アクセスポイントに対応する地域」とは「IPアドレスを割り当てるアクセスポイントが利用している物理的回線網等の敷設範囲に相当する地域」を意味すると解釈した。そして、被告方法等はIPアドレスと地域を対応させたデータベースを利用しており、その判別結果がユーザ端末の所在する都道府県とほぼ一致すること、兵庫県尼崎市からのアクセスが「大阪府」と判別されることが回線網の敷設構造と整合することなどの事情から、被告方法等は本件各発明の技術的範囲に属すると認定した。無効の抗弁については、先行文献(甲14の1文献)はドメイン名やwhoisデータベースに基づきIPアドレスを緯度経度に写像するものであり、アクセスポイントに対応する地域とIPアドレスを対応付ける本件各発明とは相違するとして、新規性・進歩性の欠如を否定した。サポート要件違反等の主張もすべて退けた。損害額については、YDN及びプレミアム広告の実施料率を自社サイト掲載分につき3%、提携サイト掲載分につき1.5%と認定し、弁護士費用5000万円を含む合計約10億3109万円の支払を命じた。一部につき消滅時効の成立を認め、当該部分は不当利得返還請求として認容した。