AI概要
【事案の概要】 ビジュアル・アイデンティティ(VI)の制作等を目的とする控訴人(デザイン会社)が、社会インフラ関連の商品販売等を業とする被控訴人及びその関連会社(播磨喜水・ナカシマエナジー)からの依頼を受けて制作・納品したデザイン制作物に関し、(1)パッケージデザインの未払報酬約1260万円の支払、(2)播磨喜水関連の原告制作物(チラシ、商品カタログ、レシピブック掲載写真、店頭POP等)に係る著作権(複製権等)侵害を理由とする差止め・損害賠償約952万円、(3)被控訴人(ナカシマ)関連の原告制作物(コーポレートシンボル、事業領域図、リクルート用パンフレット等)に係る著作権侵害を理由とする差止め・損害賠償1100万円を請求した事案の控訴審である。原審(大阪地裁)は控訴人の請求をすべて棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)各原告制作物の著作物性及び著作権侵害の有無、(2)播磨喜水関連業務委託契約2が個別のデザイン制作委託契約の基本契約として適用されるか、(3)デザイン制作委託契約において著作権の譲渡又は黙示の包括的利用許諾の合意があったか、(4)パッケージデザインの未払報酬の有無、(5)損害額である。特に、契約書が作成されていない個別のデザイン制作委託契約における成果物の利用許諾の範囲が中心的な争点となった。 【判旨】 控訴審は、原判決を一部変更し、原告制作物1(レシピブック掲載の料理写真)に関する著作権侵害のみを認め、損害賠償として2万7500円(使用料相当額2万5000円+弁護士費用2500円)の支払を命じた。 まず、パッケージデザインの未払報酬請求については、印刷個数による料金算定方法が合意されたと認定し、原審同様に請求を棄却した。 著作権侵害に関しては、播磨喜水関連業務委託契約2は有効期間が業務委託費の支払完了時までとされており、既に期間が終了していることから、個別のデザイン制作委託契約の基本契約とは認められないとした。また、著作権の譲渡も否定し、著作権は控訴人に留保されていたと認定した。そのうえで、デザイン制作委託契約の趣旨から、成果物の目的の範囲内での複製について黙示の利用許諾があったと解釈した。原告制作物1については、レシピブックの料理写真を制作目的の異なる夏期用チラシの背景に無断で使用したことは利用許諾の範囲外であるとして著作権侵害を認めた。一方、コーポレートシンボル等のナカシマ関連制作物やPOP等については、事業活動に必要な範囲内の利用として侵害を否定した。差止請求は、夏期用チラシが時期を過ぎており頒布のおそれがないとして棄却した。